ほんの少し雑談交わして。シンシアはロザリーを連れて席を立った。

それを笑顔で見送ったソロは、ピサロと共に建設中の住居がある方へと歩き出した。

「‥ピサロは、今日は忙しくなかったの?」

しばらく歩くと、ぽつっとソロが訊ねた。

「ん? ああ‥まあ、予定がなかった訳でもないが。ここの所忙殺されていたからな。

 たまには良いだろう。」

「そっか。本当に忙しそうだもんね、なんか‥」

「まあな。」

「それなのに。いろいろこっちの事も気遣ってくれて、ありがとう‥」

ソロは静かにそう語ると、小さく息を吐いて立ち止まった。

来た道を振り返るようにして、木立の先を憂いを帯びた眼差しで見つめる。何かを口に

仕掛けたソロだったが。思い留まったよう緩く首を振ると、近くにあった樹木の幹に

身体を預けるよう寄りかかった。

「‥シンシアがさ、何か悩んでるみたいなのは、感じてたんだ。

 けど‥オレにも、マーニャ達にも相談出来ないで、抱えてたんだと思う。

 ロザリーになら、それが出来るのかな‥?」

「同じエルフとして、何か通じる所を見出したのやも知れぬな‥」

「‥うん。だといいな‥」



「そこに座りましょうか?」

村外れに残る柵の側に設置されていたベンチ替わりの丸太を指して、シンシアが隣を歩く

ロザリーに声を掛けた。

「ええ。」

ロザリーは丸太を半分に割ったベンチへ躊躇なく腰掛けた。

古く傷みかけているベンチに素直に腰掛ける姿に、シンシアの気配が和らぐ。

彼女もロザリーの隣に座ると、すうっと空を仰いだ。

「村の景色は様変わりしてしまったけれどね。こうして見る空の姿は、昔と変わらないの。」

青い空と風に散らされたような白い雲がたなびく空を愛おしそうに眺めながら、シンシアが

明るい声で話す。

「だからかな。ここに来ると落ち着くの。」

「‥空がこんなに広いだなんて。ずっと私は知りませんでした。ソロさんが千年花で、

 私を冥府から呼び戻して下さらなかったら、知る事のないままだったでしょう‥」

シンシアと同じように空を仰いだロザリーが、穏やかな表情で紡いだ。

「そうだったの‥。あなたも苦労したのね‥」

「あ‥いえ。私は‥いろいろ幸運だったと思います‥」

ソロから彼女の事情を聞いてたシンシアは、静かにそう語れる彼女に仄かに微笑んだ。



「すっかり引き留めてしまって、ごめんなさいね?」

「いえ。いろいろとお話伺えて良かったです。

 また何か、力になれる事があれば、いつでも呼んで下さい。」

大分日が傾き始めた夕刻。村の入口でシンシアとロザリーが名残惜しそうに語り合う。

「今日は本当にありがとう。また遊びに来てね、ロザリー。」

「ありがとうございます、ソロさん。」

「ピサロもありがとう。」

ソロの言葉にピサロが小さく頷くと、彼の隣に立つシンシアへも軽く会釈をした。

シンシアも同じように挨拶を返す。

「ではな。何かあればいつでも連絡寄越せ。」

そう告げて、ピサロはロザリーを伴って移動呪文で村を後にした。

光の尾が空の彼方に消えると、残された2人がほお‥とそれぞれ息を吐く。

長い吐息が重なって、ソロとシンシアは顔を見合わせるとクスクス笑いだした。

「‥なんだか慌ただしい一日だったね。」

「本当ね‥」

今朝の予定ではのんびりした一日となるはずだったのに‥と、2人が笑い合っていると、

移動呪文の光がこちらへと近づいて来た。

「「あ‥」」

その次の間には、光と共に風が舞い降りる。

「お帰りなさい、ミネア。マーニャ。」

「ただいまシンシア。」

「あら‥シンシアにソロ。あたし達の出迎え‥じゃないわよね?」

「お帰りマーニャ。ミネアも‥」

傍らまでやって来たソロが、ミネアが持つ荷を持とうと手を差し出す。

「ただいま。お言葉に甘えてのんびり買い物して来たけど。何かあった‥?」

マーニャが案じるように訊ねると、ソロとシンシアが複雑そうに顔を見合わせた。

「うん、まあ‥。なんだか怒濤のような一日だったよ‥」

ソロが言葉を探すようにしながら返答する。

「ふふ‥まあ、話すと長くなるから。戻りましょうか。2人とも疲れたでしょう?」

シンシアが明るく促すと、一同も納得し、村の中へと戻って行った。



食べ損なったおやつのパイをテーブルに並べて。

マーニャ達が買って来た夕飯用のパスタとサラダを並べて。

夕食を取りながら、2人は今日の出来事を姉妹にそれぞれ語って聞かせた。

「ええっ!? 何よ、あたし達が留守の間に、そんなビックリ展開してるなんて!」

「うん、本当にもう慌ただしかったよ、なんか‥」

ソロが微苦笑して答えると、シンシアも同意を示すよう頷く。そんな2人にマーニャが

ため息の後残念がるようこぼした。

「それにしても水くさいわね、シンシア。

 ロザリーに会いたかったら、あたしに言ってくれれば、いつでも紹介出来たのに〜」

「ええ‥それも考えたりしたんだけどね。ロザリーに変な負担かけたりはしたくなかった

 から、頼んでいいものか悩んでしまって‥。

 あの人なら、彼女にマイナスだと判断したら、バッサリ断るかな‥って。」

「シンシアらしいわね。‥それで。会ってみてどうだった?」

「ええ。とても素敵な人ね。いろいろ話が弾んでしまって。

 あっと言う間に時間過ぎちゃった。」

ミネアの問いかけにふふ‥と笑んで、肩を竦めて見せる。

「そうそう。シンシアったら酷いんだ。午後のおやつの時間には合流しようって別れた

 のに。ちっとも戻って来ないんだもん。

 結局おやつ食べそびれて、まるまる残っちゃったんだ。」

食後のデザートになってしまったパイにフォークを突き立てながら、ソロがぼやく。

「あら。それならソロはずっとピサロさんと一緒だったのでしょう? 退屈なんてする

 間なかったのじゃなくて?」

「そうよねえ。今日はクリフトも居なかったんだし。独占欲満々のぴーちゃんと2人きり

 ‥って、久しぶりだったんじゃない?」

「それはそうだけど‥。あいつも酷いんだ。約束の時間過ぎても戻って来ないからさ、

 呼びに行こうとしたのに。邪魔するんだもん。」

ぷう‥と頬を膨らませて、不機嫌顔を浮かべるソロに、隣に座るシンシアが頭を撫ぜた。

「ロザリーと大事な話してたから、気遣ってくれたんでしょうね。

 なかなか役に立つじゃない、あの人も‥」

「仲間になった時はどうなるかと思ったけど。意外と律儀な所あったりするんだよねえ、

 ぴーちゃんて。パーティ組んだ頃よりずっと、周囲に気配りしてくれるようになったし‥」

「そうなんですか。そういえば、サントハイムへもよく訪ねて行ってるみたいでしたね‥」

そもそもの発端をふと思い出して、シンシアが「ああ」と頷いた。

「ああそうだったね。元々アリーナの元へ用事があって出向いたら、ブライに捕まって、

 クリフト迎えにここへ来る羽目になったとか‥」

「クリフトかあ。あいつも今日の話聞いたら、ビックリするわね、きっと。」

「姉さん、顔、顔。」

ニマニマニマ〜っと人が悪そうに笑むマーニャに、妹が呆れ返った。

「ああ気にしないで、2人とも。姉さんのいつものアレだから。」

きょとんとした顔を浮かべる両者に、ミネアがふふふと笑った。

「ああ、いつものね。」

何故かやたらとクリフトと張り合いたがるマーニャだったので。

またその辺で、何か勝ったつもりなのだろうとソロが納得顔で頷く。

「いつものって?」

「ああ、なんかね。マーニャってば、やたらとクリフトをライバル視しててさ。

 きっと何かに勝ったつもりなんだよ、これ‥」

「まあ姉さんの事は放置で。それでソロ、明日は予定通りに行くの?」

不思議顔のシンシアに説明するソロに、ミネアが切り出した。

「うん。そのつもり。幸いお天気も良さそうだし、ピサロにもそう伝えてあるから、

 明日はレン達に留守お願いすれば問題ないかなって。

 クリフトは元々留守番する予定だったしね‥」

「気球が本当に苦手みたいだものね、彼‥」

「まあ誰だって、苦手の1つ2つあるよね‥」

クスっと笑うミネアに、ソロがフォロー入れる。

「ソロの苦手はそれだけで済まないけどね。」

「シンシア〜」

こつんと額を指で突つかれて。ソロが苦い顔を見せた。



なんだかんだと賑やかな夕食が終わると、ソロは明日の準備にと彼女達が買って来た品物

のチェックを始めて。女性達は風呂へと向かった。

「ふう‥後は明日で大丈夫かな‥」

何かあった時の為にと、必要になりそうな道具類などを気球に積み込んで、ソロがやれやれ

とため息をこぼす。

「ふふ‥ご苦労さま、ソロ。」

「え‥シンシア? マーニャ達と風呂に行ったんじゃ?」

「ええ‥そう思ったんだけどね。今日はクリフトが居ないでしょう?

 ソロが寂しくしてるんじゃないか気になって‥」

「や‥やだなあ。オレ、そんなに頼りないかなあ?」

ふふ‥と笑うシンシアに、ソロが情けない表情で返す。

「うふふ‥。まあ半分冗談だけど。ソロが気になったのは本当。

 それとね、もう1つ本題が‥」

そう言うと、シンシアがソロの腕に自分の腕を絡めさせた。

「せっかくだから、ソロと一緒にお風呂入ってみようかな〜と思ってね。誘いに来たのよ?」

「え‥? ええ〜〜〜!?」


 
 
           



















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