「ただいま〜!」

幾つかの戦闘をこなした後、一行は拠点へと引き返した。

「お帰りなさい、皆。どうだった?」

出迎えたアリーナが開口一番訊ねてくる。

「うん、なんとかいけそうだよ。新しい連携もなんとか形になりそう。」

「そっか。うん、よかったわ。あいつらとの一戦前に、戦闘パターンが増えるのは心強い

 もの。」

「それ程の強敵なのか、本当に?」

洞窟最深部に住むという謎の2人組について。聞けば聞くほどその実力が危ぶまれてしま

うピサロが、再度確認する。

「強いわよ〜。デタラメにね。」

「強いよ。本当に。…すっごく変な奴らだけどさ。」

「そうそう。変よね〜あの2人。まだあれやってるのかしら?」

「あ。鶏と卵?」

「やってそうね、それ。」

盛り上がるソロとアリーナに、ミネアが参戦した。

「やってる、やってる。賭けてもいいわ。」

マーニャも面白そうに、ソロを背中から抱きしめつつ加わった。

ピキ‥と青筋立てる魔王の横に立った神官が、宥めるように肩に手を置いた。



結局。女同志の語らいの邪魔をせぬようにと、残るメンバーは宿へ先に引き上げた。

「‥で。実際どうだったんですか?」

宿の戸を潜ると、クリフトが早速訊ねて来た。

「ああ‥そうだな‥」

戻ったメンバーの視線が一斉に注がれて。ピサロは小さく息を吐いた。

「連携はまあ、なんとかなるだろう。だが…スタミナ不足を補うまでにはな。」

洞窟内に棲息する魔物相手ならば、問題はない。けれど、強敵相手に戦うには心元ないと、

ピサロは見解を述べた。

「まあ‥病み上がりですからねえ。いくら勇者とはいえ、魔力の回復のようには行かない

 のでしょうねえ‥」

「うむ‥。まあ、我らも前回より力をつけているのだし。今回は強力な新メンバーも居る

 しの。頼りにしとるぞ。」

トルネコに答えたブライが、ぽむとピサロの背を叩いた。

「そうですね。明日はいよいよ最深部目指すのですから、がんばって下さいね、魔王さん。」

「ん? 明日のメンバー、もう決めてあるのか?」

「ええ、ブライ様。姫様とマーニャさん、トルネコさん、後は魔王さん‥という事で。

 すんなり決まりましたよ。」

「待て。私は休みなしか?」

にっこり話すクリフトに、ピサロが苦い顔を浮かべる。

「そうですね。なにか問題でも?」

否を言わせぬ微笑みで返す神官に、ピサロは盛大な吐息をついた。





「行ってらっしゃ〜い。」

翌日、洞窟の入り口で明るくソロが今日の探索メンバーを送り出した。

ニコニコ顔に見送られて、ご機嫌なマーニャとほんのり渋い顔のピサロが内部へ歩を進め

ていく。

「ふっふ〜ん。朝から仏頂面ねえ、ぴーちゃん。」

「連戦ですから。疲れてるんじゃありませんか?」

「元・魔王サマがこれぐらいで疲れている訳ないじゃない。ねえ?」

無言でスタスタ歩くピサロを追いかけるように小走りしたマーニャが並んで、声をかけた。

「ソロが機嫌よ〜く送り出してくれたのが、面白くないんでしょ?

 淋しがってくれないんだ‥とか。」                          揶揄う→からかう

揶揄うマーニャにギロ‥と睨みを利かせるピサロだが。効果は微妙。仕方なく、彼は無言

のまま歩き続けた。

「マーニャったら。あんまり苛めちゃ可哀想よ。仕方ないじゃない。

 クリフトの方がずっと長くソロと過ごしてるんだもの。」

「そうねー。

 一番最初に出会ったあたし達姉妹よりも、ずっと一緒に居るものね、あの2人は。」

「ソロはずっと奴と同室だったのか?」

この際だからと、ピサロがぽそりと訊ねた。

「そうね‥最初の頃はあたし達と同室で。その後仲間になったホフマンと、しばらく一緒

 だったわねえ。彼がパーティから抜けたのと同じタイミングで、クリフト達が仲間に加

 わって‥。その直後からね、2人同室が確定したのは。」

「ホフマン?」

「ああ‥ぴーちゃんは知らないわね。パトリシアの元の持ち主だった男の子よ。今は移民

 の町を大きくしたいって、がんばってるの。しばらく会ってないけど、元気かしら‥」

「ソロとは親しかったのか?」

「え…普通じゃない? クリフトとだって、最初からベタベタだった訳じゃないしね。」

「そうですねえ。彼が最初の頃一番心砕いてたのは、アリーナ姫ですものねえ。」

マーニャの言葉をトルネコが継いだ。

「ふふ‥トルネコもよく見てるわね。」

「‥いつから変わったのだ?」

「あら‥気になる?」

魔物に遭遇しない道中は、すっかりおしゃべりタイムと化していた。

マーニャはしばらく口を閉ざしているアリーナに目をやって、それから考える仕草でピサ

ロを覗う。

「きっかけはね‥ソロが寝込んだ事かな?

 あの子が倒れた原因を、あたしと彼で突き止めようって、共同戦線張ったの。」

「ええっ? それ、初耳よマーニャ。」

「あら‥そーだった? 実はそうなの。お互い情報交換しあおうって。それでソロの悩み

 が軽減出来れば…って事だったんだけど。あいつったら、こっちには全然情報くれなく

 てさ。知らないって言ってたけど、絶対嘘ね。それでちゃっかり抜け駆けしたんだわ!

 あ〜思い出したら、悔しい!!」

話してるうちに当時が蘇ったらしいマーニャが、地団駄踏む。

「ふふふ。彼の抜け駆け云々の前に、マーニャは最初から対象外だったんじゃない?」

「そうですねえ‥。ソロは女性に苦手意識があるようですし…」

「…鋭い突っ込みありがとう。

 一度聞いてみたかったんだけど。アリーナはさ、それで良かったの?」

「え‥?」

「クリフトが取られちゃってさ。」

「ん〜、別に。問題なかったわね。正直まだ、恋愛って分からないわ。」

ぽつんと返した所で、幅の広い通路との交差点へと出た。

注意深く左右を確認したピサロが、剣の柄に手を伸ばす。

「‥2体‥3体はいるな。気を抜くなよ。」





「ソロ、今日はのんびり過ごして下さいね?」

洞窟探索メンバーを見送った後、宿への道を歩きながら、クリフトが声をかけた。

「彼らが最深部へ到着次第、我々も向かうのですから。体力は温存しておかないと‥」

「…うん。分かってる。あいつらの強さは半端ないもんね。

 ‥今のオレがどこまで食い下がれるものか。‥本当はね、自信‥ないんだ。」

地面へ目を落としたまま、ソロは細い声で話した。

「‥そこへ座りましょうか?」

すぐ脇にあるベンチを指すクリフトに、ソロはコクリと頷いて、腰掛けた。

「…以前ならさ、連戦してもそんなに大変だと思わなかったのに。今は…少し辛いかな。

全力疾走した後みたいな疲労感なんて。1日中戦った時とかくらいしかならなかったの

 にさ。…情けないや、本当。」

「情けないのは我々の方ですよ、ソロ。」
                                                   天→そら
高くもない天を仰ぐソロに、クリフトが微苦笑し返す。

「なんで?」

「本来ならのんびり養生してなくてはならないあなたを、結局は頼らざるを得ない不甲斐

 なさに‥です。」

きょんと返すソロに、更に苦い顔でクリフトが答えた。

「‥そっか。オレはみんなに助けられてばかりで、申し訳ないと思ってたけど。

 そんな風に言われると、ちょっと気が楽になった。オレ達パーティなんだもんね。

 お互いに補いあって、いいんだよね。」

笑みを浮かべるソロに、クリフトも微笑む。

「そうですね。頼もしいメンバーも加わったのですから、きっと大丈夫ですよ。ね?」

「うん。あいつには悪いけど、目一杯がんばって貰おうね。」