デスパレス。

夏の暑い太陽がじりじりと城を熱し、非常に暑い――そんなある日。



「暑い〜」

タンクトップに短パン姿のレイエルが、少しでも涼しい場所を求めるよう城内を彷徨って

いた。廊下を歩くとソロの部屋の扉が少しだけ開いている。レイエルは足を止め、中を

こっそり覗き込んだ。

ベッドに横になってるソロの姿を見止めて、レイエルは彼の部屋へそっと踏み入れた。

どうやら彼は昼寝中らしい。すうすうとソロは気持ち良さそうに寝入っていた。

「ソロ‥暑くないのかなあ…?」

ベッド端に肘を乗せ、その脇に座り込んだレイエルがソロの寝顔を覗う。フリフリと長い

しっぽを踊らせて、彼はなんとなくその寝顔を見守っていた。

「みゃあ」

窓枠から滑り込んで来た白猫が、一声鳴いて眠るソロのすぐ隣で体を丸める。肩と頭の間

にすっぱり身を納めてくつろぐ姿に、レイエルが口をヘの字に曲げた。

「ずるい。オレの方が先だったのに。」

言って、彼はベッドに乗り上げた。猫に負けじとレイエルもぴたっとソロに寄り添う。

「うう‥ん…」

体温の高い生き物に囲まれて、ソロがほんのり眉を寄せた。そもそも涼む場所を探してい

たレイエルも、非常に暑かったのだが。ソロの側は居心地良くて、離れ難い。

更にぴったり身を寄せて、彼は少し苦しげなソロを見つめた。

「起きないかな‥?」

一緒に遊んで欲しいのに‥そんなこと思いながら。レイエルがじっと視線を注ぐ。

「あ‥そうだ!」

眠るソロを見つめるうち、レイエルは先日ソロに読んで貰った絵本を思い出した。

何年も眠ったままのお姫様は、王子様のキスで目を覚ました――

レイエルはにんまり笑みを深めると、徐にソロに口接けた。

そして。わくわくと、彼の目覚めを待つ。

ところが。

絵本のように上手くいかないらしい。

レイエルは不満そうに口を尖らせて、頬をぷっくり膨らませた。

暑さも一層募ったようで、だらだらこぼれる汗を煩わしく思い、レイエルは着ていた上着

を脱ぎ捨てる。 開放された窓から入り込む風がさあっと躰を通り過ぎて、涼を齎した。

心地よい風に口元を綻ばせたレイエルだったが。ふとソロが寝苦しそうに汗を落としてい

るコトに気づく。

「ソロもやっぱり暑いんだ。」

うんうん‥と、納得顔でレイエルは、彼の服に手を伸ばした。

プチプチ…小ちゃな手で、不器用にシャツの前ボタンをレイエルが外してゆく。

上着を左右に開くと、白い肌が露になる。

レイエルは興味深げにその肌へ手を滑らせて、桜色の粒をきゅっと指で押してみた。

「ん…くすぐったいよ、ピサロ‥」

「違うもん。レイレイだよ〜。」

ぽつっと寝言をこぼしたソロに、レイエルがぷうっと口を尖らせた。

ぺたぺたと無遠慮に、小さな手が肌を這う。ソロはくすぐったそうに身動ぐと、ぼんやり

目を覚ました。

「んん‥? なに‥‥‥?」

「あっ。ソロ起きた〜!」

「レイ…? なにやって…え?」

レイエルが服を脱いでしまうのはよくあるコトだが。何故か自分まで半裸にされている。

「ソロ暑いから、涼しくしてたの。」

「は…?」

なんのコトやら測り兼ね、ソロが首を傾げた。

「ソロ〜、やっぱりここも暑いね。どっか涼しいところな〜い?」

彼が目を覚ました事で当初の目的に返ったレイエルが、グデッとソロに寄りかかった。

「う〜ん‥確かに…暑いかも‥ね。」

体温の高い彼に苦笑しながら、ソロが枕元でまだ眠ったままの白猫へ目線を移す。

急に暑くなった原因はこれか‥ソロはひっそり嘆息した。懐かれるのは嬉しいが、暑い…

「川に遊びにでも行く?」

城のすぐ前を流れる小川は、流れも緩やかで水遊びには丁度良いだろう‥とソロが提案し

た。

「川…? うん、行く行く!」



「ひゃあ〜。気持ちイイね〜!」

透明な清流に足を浸して、レイエルがにっこり微笑んだ。

「ああ‥本当だね。」

続いてやって来たソロも足を浸けると彼の隣に立った。

一番深い所でも、ソロの膝上辺りまでしかない小川は、泳ぐには適さない場所だったが、

水と戯れるには申し分ない場所だった。



「なにやら和やかですね〜。」

執務室から姿を消した主を追ってやって来た小川の辺。

木陰から2人の様子を見守っていた魔王に、側近アドンが声をかけた。

楽しげに水遊びに興じる彼らを微笑ましく見守って、アドンが更に言葉を重ねさせる。

「陛下も交ざって来たらいかがですか?」

「ふん‥。私にアレが出来ると思うか?」

すっかり童心に返って遊ぶソロの姿は微笑ましいが、自分には向かないときっぱり魔王が

宣った。

「…まあ。似合ってるとは申しませんが。

 それにしても。すっかり馴染んでしまいましたね〜、あの子。」

「そうだな。」

「まあ、帰る方法が見つからなければ、ここにずっと居ればいいだけですしね。

 陛下はその方がありがたいでしょう? ソロさんとの同居も叶いましたし。」

有耶無耶のうちに魔城に住むようになってしまったソロに、魔王はいたくご機嫌だった。

「あ‥! ピサロ〜!! 一緒に遊ぼうよ〜!」

ソロに気づかされたレイエルが、川から手を振り呼びかけた。

「…たまには健全な遊びに付き合って上げてはいかがですか?

 ソロさんの為にもね。」

アドンはそう声をかけ、一礼すると場を後にした。

「ねえねえ。遊ぼv」

タタッ‥と駆け寄って来たレイエルが、ピサロの手を引く。彼に導かれるカタチで、ピサ

ロも小川へとやって来た。

「ソロ〜、ピサロ連れて来たよ。一緒に遊ぶって!」

「‥何も申しておらぬのだがな。」

嬉しそうに報告するレイエルに、魔王が苦笑いを浮かべた。ソロが小さく笑って、レイエ

ルを招く。呼ばれた彼が魔王から離れると、ソロがつい‥とピサロに近づいた。

「暇そうにずっと眺めてたろ? どうせなら付き合ってよ。」

彼が木陰にやって来てすぐ気づいてたソロが、フフ‥と微笑んだ。

「それとも‥色絡みじゃないと、動かないのかな魔王さまは。」

すっと腕を差し出して、身を屈めたピサロの首に腕を回し引き寄せる。

唇が触れ合う程に近づくと、バシャっと盛大に水が跳ね上がった。

ソロが翼に含ませた水をピサロに浴びせたのだ。

「わあ〜い! やった〜、うまくいったね、ソロ!」

レイエルが水の中でぴょんぴょん跳ねる。ソロも悪戯っぽい笑みを浮かべて、レイエルの

協力を称えた。ソロの背後に回ったレイエルが翼に水を蓄えさせた。そう、2人の連携で

澄ました魔王に不意打ちを食らわせられたのだ。

「ほお…。なかなか愉快な事をするではないか。」

思いきり水を浴びた魔王が、低い声を発する。

「2人とも覚悟は良いな?」

そう吠えると、水飛沫を上げてピサロが2人に迫った。

「きゃあ〜。ピサロが怒った〜!」

嬉しそうにレイエルが逃げ出す。ソロもひらりと彼を躱すと、魔王へウインクを送った。

肩を竦めて返した魔王が逃げる子供を追いかける。



結局、レイエルが疲れて眠るまで、3人の水遊びは続いた。



「レイエル寝ちゃったね‥」

水から上がって休んでいるうちにすっかり熟睡してしまった彼を抱き上げて、ソロが立ち

上がった。

「結局半日付き合わせちゃったね、ピサロ。」

「まあ‥たまには良かろう。」

「ふふ‥本当、珍しい。あんたがこんな遊びに付き合ってくれるなんて意外だったよ。」

「…お前も、随分愉しげだったからな。」

す‥とピサロがソロの頬を手のひらに包む。そっと滑った手が顎を捉え上向かせた。

しっとり重なった口接けが解かれると、ほお‥と甘い吐息がこぼれる。

「今度はどこか遠出してみるか。お前も嫌いじゃないだろう、ソロ?」

「‥うん。そーだね、お弁当持って遊びに行こうか、3人で。」

「ああ…。」



陽が傾くと涼やかな風が吹き抜ける。

夏の一日が終わる。

3人の暮らしは穏やかに過ぎて行った――






――――――


ところで。
…レイエル、帰らなくて大丈夫?(苦笑)







宮叶さんのお誕生日祝いに贈らせて頂いた短編です。
ウチでお預かりした(笑)レイエルくんのその後の様子など綴ってみましたv
なんだかすっかり馴染んでしまってるようで(^^
ソロは3人…ていうのがとっても落ちつく子なんだと改めて思ったり…(苦笑)

なんだかほのぼのしくまとまってしまいましたが。
裏にいったらすごいだろうな…とか(^^;
旅が終わってから大分過ぎた後…とゆーコトで。
落ちついたソロを描けるのが楽しかったですvv

2006/8





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