薄闇―――ソロ編


明けない空をずっと眺めていた。
どこへ行く気もなく、ただぼんやりと。

なにもかもが曖昧になるような、濃い藍色に包まれた刻。

その中に身を置いて、いっそ溶けてしまえたら…
そんなコトをぼんやり考えてると、声が掛けられた。


「‥まだ夜明けまでありますよ?」

気遣い帯びた口調でひっそりと紡がれて、オレは声の主を振り返った。

「‥どうしました? 眠れませんか?」

「‥クリフト。ごめん‥起こしちゃった?」

小さく謝ると、すぐ隣で寝ていた彼が体を起こしオレと並んだ。

ピサロを迎えて、馬車での移動ばかりの毎日。

野営の場所で交代で体を休めているので、すぐ間近に別の仲間達も眠っている。

ピサロは見張り番中だ。

あいつが仲間として共に在る‥という環境は、緊張を無駄に強いて落ち着かなくさせた。

仲間になってからのあいつは、オレのコト‥好き‥みたいに言い出して。

なんだか信じられないんだけど。

…よく解らなくて。

クリフトは‥オレのしたいようにと笑ってくれるけど。

でも…それもよく解らないんだ。

あんまりにも不確かな中に在ると、幸せな夢が消えないうちに、空に溶けてしまっても

いいな‥と、ふと思う。

「‥どうしたの、クリフト?」

スッと抱き寄せられて、オレは不思議と訊ねた。

「‥いえ。なんだかあなたが消えてしまいそうだったので。」

「‥大丈夫。まだやるコトが残ってるんだもん。オレは‥居るよ。」

「‥それでは、いずれ居なくなってしまうようではありませんか。」

「‥そっかな?‥そうなのかな‥?」

一層力強く抱きしめられて、オレは甘えるように身を寄せた。

「そんな寂しいコト、言わないで下さい、ソロ。」

「寂しい‥?クリフトが?」

「ええ。」

「‥そっか。じゃ‥寂しくない方がいいね。」

薄闇の中、寄り添い合って、触れるだけのキスを交わす。


どこにも行かなくていいと―――優しい人が告げる。

その包容が心地よくて‥オレはいつしか眠りの淵に誘われていった。



2007/5/10

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