だから僕は嘘をつく―――クリフト(ソロ編)





ずっと昔。

…そう、まだ両親を中心に世界が在った頃。

怖い夢に目を覚ました自分は、両親の姿を求めて、続きの間の戸をそっと開いた。

話し声が微かに届いてたので。2人がまだ起きているのは分かっていた。

けれど…

母の泣いてる姿を目の当たりにするとは、思いもしなかった。

精一杯腕を伸ばして回したドアノブから手を離し、僅かに開いた戸の影から、そっと

様子を覗き込むと‥

いつも笑顔を絶やさぬ母が…泣いている。

声を殺すようにしながら、父の胸を握った拳で叩いて‥。

「…どうしてあの子なの? 占い師たちはあの子が疎ましいの?

‥あんなに可愛いから?! だから意地悪な事を言うの?」

「落ち着きなさい。占い師の予見など、お前だって最初は疑ってたではないか。」

「ええ、そうよ。だって信じられないわ。あんな言葉…。

だから、簡単に否定してくれると思ったのに‥!」

そう喚いて、母は苛立ちをぶつけるように、父の胸を更に叩いた。

それから嗚咽を堪えるように肩を震わせて、泣き伏せる。

なぜだか見てはいけなかったような気がして。そっと扉を閉ざした。


―――未来が見えない。


占い師の言葉の最後は、決まってそう結ばれたのだと言う。


違う言葉が聞きたくて。様々な占い師を訪ねた母は、決まって告げられる言葉が

増える度、闇を背負っていくようだった。

そうして壊れてく母がやがて伏せるようになり、若い生を閉ざした頃には、父と

の間にも深い溝が横たわっていた。

今なら逃げ出した父の気持ちも理解出来ないではない。

けれど…子供だった自分には、目の前の現実だけが真理だった。


だから…だろうか?

勇者という枠の中で。

苦しむソロの姿が。幼い頃叶わなかった自分の思いに重なって。

酷く苦しい瞬間がある。


そして。

そんな彼への感情が、やがて別の情を孕んでゆく中で、1つ気づいてしまった。

あれ程下らなく思っていた、母が呪縛されてしまっていた占者の言葉を、受け入れて

しまっている自分に。


―――あとどれだけ残されているのだろうか?


そんな事をふと考えて。

苦い微笑が浮かぶ。

未来など判らない―――と。一蹴していた自分はどこへ行ったのか。


…いや、そうじゃないな。

知る事で見えた事実があるから。理解したのだろう。

その先に待つ解答を‥



それでも。

知らぬ顔で僕は言う。


―――ずっと側に居ますよ‥ と。


叶えられないかも知れない約束。

希望を込めた約束…


たとえそれが叶わずとも、約束を交わしている間の思いに偽りはないから。

どうか…違える日が来ても、許して下さい‥







2008/4/29

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