音が消えた世界―――ソロ





あの日の映像は、鮮烈に胸に刻まれて残っている。

無意識に跳んでいた、故郷の村。

優しい光の中に、溶けてしまえればいいのに‥と、本気で思って、泣いていた―――

だって‥誰にも見られたくなかったから。

もう、なんにも残ってないのだと‥そう思ったから。

だから‥消えてしまいたかったんだ。

そしたら‥

ピサロとクリフトが追って来て。

オレは慌てて移動した。

そこは古い遺跡の残る場所。

幾度か訪れた事のある―――

以前にも、無意識で跳んで、降りたっけ。

全部捨てようと思った場所だ。

まとわりつくような嫌悪感を拭い去りたくて、オレはプールになってる水溜まり

へと身を浸した。

着衣のままなのも構わずに…

そうしてたのが、どのくらいの時間だったのか、わからない。

ただ‥気づいたら、クリフトとピサロが、オレを挟みうちするように構えていた。

呪文も封じられちゃったから、今度は振り切れなくて。

ヒステリックに叫ぶだけ。

何を喚いていたのか‥振り返って浮かぶ映像には、音などなくて。

ただ‥

透明な水の感触と、真剣な顔で怒っているクリフト、それから‥酷く傷ついた顔の

ピサロが蘇るだけ。


あの時は‥自分の感情ばかりで、気付けなかったけど‥。

記憶に刻まれていた2人の表情が、無音の世界の中、哀しくて苦しかった心を不思議に

穏やかにして。

ツライばかりの記憶じゃなくなってるコトに気づかされる。



―――音が消えたその世界は、思ったより優しく、静かにオレの中にあった





2008/7/7
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