無言の決定―――クリフト&ピサロ(ソロ編)




特にどちらが言った訳ではない。

けれど…それは1つの決定事項。

不安定な魂を見失わぬ為の最良策と思えたから―――


「‥あのね。ピサロもクリフトも…迷惑掛けちゃってごめんね。」

死線を彷徨ったソロが、ようやくその意識を取り戻すと、すまなそうに口を開いた。

「何言ってるんです? そんな事思う筈がないでしょう。とにかく今は回復に専念して下さい。ね?」

「そうだぞ。お前は大分鈍いようだから、キッパリ申し渡しておく。当面の間、勝手にそこから出るな。」

「…トイレも?」

苦い顔でしばらく考えてたソロが、小さく疑問を投げかけた。

「そうだ。私かそれの手を借りて行け。」

それ‥言われたクリフトが一瞬眉を顰めたが、すぐに普段の笑みに戻って念を押す。

「そうですね。またフラッと居なくなられても困りますから。そうして下さい、ソロ。」

有無を言わさぬ微笑みに、ますますソロが渋面を浮かべる。

先だっての逃走劇に本気で怒ってるのだろう様子をビシバシ感じる。

「‥なんかさ。看病‥とゆーより、監視されてるみたいだ、オレ‥」

首にあしらわれたチョーカーを指で弾いて、ソロが負けじとぼやく。

「おや‥理解りました? いっそ、鎖で繋いでしまいたい気分なんですよ、本当は…」

「…ベッドに?」

「いいええ。私の腕にですよ。あなたの腕とね、繋いでしまいたいな‥と。」

それぞれの手首に触れて、クリフトが笑う。それにつられてソロも微笑んだ。

「ふふ…それじゃあ、クリフトも捕まったみたいだよ?一緒に連行される犯人みたい。」

「そうですか?

 ソロとの追いかけっこは、あまりに自分に不利なんでね、いいアイデアだと思ったんですけど。」

「そうだな。なんなら、私が繋いでも良いぞ?」

「もぉ‥ピサロまで。くすくす‥変なの…」

「そうか? お前の行方が途絶えた時も‥目の前から逃げ出された時も‥生きた心地がしなかった

 からな。それくらいせねば、安心出来ないという事だ。」

「…ごめんなさい。いっぱい心配してくれてるんだよね。‥ありがとう…」

「‥さ、まだ熱があるんですから。ゆっくり休んで下さい、ソロ。」

「‥うん。」

促されるままゆっくり瞳を閉ざしたソロから、やがて静かな寝息が立つ。

「‥あながち冗談でもないですけどね。」

そんな彼の眠る姿をひとしきり眺めた後、ソロの手を取りポツリとこぼした。

「‥そうだな。」

魔王が反対側の手を取って、微苦笑して返す。

そう。見失わぬ手段になるならば‥


見えない鎖で繋ぎ止めたい‥と、重ねた手に僅かな力を込める。

ふと顔を上げれば、同様な思いを抱いてるらしい神官と目が合って、ピサロはほんの少し口の端を

上げた。









『逃走』の頃のお話‥?

2007/7/4

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