感情のすべてがここにある―――シエル



一目で惹かれて。

恋と自覚する前に、憎まなければならなかった。

哀しくて。

苦しくて。

言葉にならない感情が嵐のように吹き荒れていた…

なぜ?

どうして?

どうして私だったの?

なぜ…あの人だったの?

平和だった村。

楽しかった日々‥

けれど…

村の外は違っていた。

安全なはずの町中ですら、魔物の脅威に怯え暮らす人々。

結界が完全でない事を知っているから。

大丈夫…だなんて、請け負えない。

不安に揺れる人々の姿が心に刺さる。

この苦しさは何?

泣きたくなるような、この気持ちはなんだろう…


―――けれど。


春の光のような、穏やかな時間が、すべて失くしたと思っていた自分の周りにも、

流れている事を知った。

優しい仲間。頼もしくて、明るくて‥

でも…それだけじゃないのも知っている。

私と同じように、辛い記憶に苛まれ、苦しむ胸の内に抱えている事を…


それでも。

笑顔を忘れない彼女たちが、私に勇気をくれる。

現実を見つめる勇気。

そう。

彼とはいずれ剣を交えなければならないだろう事も。

理解っている―――

だから…

戦える。そう信じてた。あの夢を見るまでは‥

戦う理由…それは私だけじゃなかった。

彼は…彼女の為に‥

なんだろう‥この気持ち。

どうして涙が溢れるの?

捨て去りたい。

捨てられない。

想いがぐるぐる巡って見えなくなる。

使命と想いが交差して、分からなくなる。


そんな時、1つの光が道を照らしてくれた。

憎しみも哀しみも…も、感情のすべてがそこにある。

だから…


希望が残された道‥選ばせて下さい。



2008/5/22
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