欠けているんだ、君が―――5主人公

不幸だと‥幾多の苦難に置かれた時でも、考えたりはしなかった。

だって‥

苦しい時には、必ず側にそれらを分かち合える友が在ったから。

だから‥不幸だなんて、思ったりしなかった。

なのに‥

君と再会して、共に過ごした幸福の日々。

それが‥失われてしまった今は、どうしても思ってしまう。

寂しい‥と。

逢いたい‥と。

身が斬れてしまうような引きつれが、全身を巡って。

欠けてしまった半身を求めてしまう。

それは、幸福とは遠い感情。

逢いたくて。

触れたくて。

切望する想いが、胸を締め付ける。


だけれど。

君の面影を残した幼い眼差しが、僕を見つめると、ふわりと広がる暖かな想いに包まれるから。

やはり不幸ではないんだと思う。

でも‥

満たされているとも、言えないんだ。

だって‥

ぽっかりと欠けてしまったその場所は、君でしか埋まらないから。


―――そう、欠けているんだ。君が



2009/7/6





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