想いが宿る―――クリフト(鷹耶編)




最初は正直困ったな…と思っていた。

頼りにされるのは嬉しいし、懐かれるのも悪い気はしない。

けれど‥。

過剰なスキンシップは気恥ずかしくて、苦手だ―――

だから…どうにか止めてくれないものかと、考える夜もしばしばだった。

それが…

いつしかその量感に馴染んでしまった自分を知った。



「‥なあ、クリフト。」

宿の部屋。啄むようなキスを奪った彼が、ふと口を開く。

「なんですか?」

「最近さ…逃げないよな、お前。」

にっかりと、嬉しげに笑う彼に、思わず慌てて俯き視線から逃れた。

「それは‥だって‥‥。‥逃がしてくれないじゃないですか、鷹耶さん。」

「‥ふうん。それで諦めてくれたって訳?」

探るように、彼が問う。

「諦めたって言う訳では‥。ただ‥別に大騒ぎする事でもないかな…と。」

「馴染んでくれたとか?」

嬉しげに話す彼に、サアっと顔が赤らんでいくのが分かる。

「な‥なに言い出すんですか、もう…。知りません、そんなの。」

ぷいと背を向けて、尖らせた口調で返す。

だが、小さな笑いと一緒に、両肩に手が置かれ、そのまま抱きしめられてしまった。

「じゃ‥もう言わないから。代わりにもう一度‥今度はクリフトからしてくれよ?」

「‥なんですか、それは。」

呆れ混じりに答えると、甘える仕草で身を寄せてくる。

「‥今日は特別ですからね?」

そう言い置いて、ほんの少し首を傾けて、唇をそっと寄せた。

微かに触れただけのキス。

それでも、鷹耶さんは嬉しそうに微笑むので。なんだか暖かい想いが込み上げてくる。

それだから、想いが宿ってしまうのだ。


そう…

僕はこんな時間が決して嫌いではなかった―――



2007/5/8

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