眩暈の様な―――ソロ


知らなかった。なにもかも。

村の外の世界を知らない―――その自覚は確かにあった。
けれど。
知らなかったのは、それだけじゃなかったコトを、仇敵であるハズの奴に教えられた。
躰に刻まれた―快楽―という名の底知れぬ美酒。
眩暈のように酔いしれ、すべてを投げ出せてしまう―――不思議な感覚。

訳の解らないうちに慣らされてしまった行為は、いつしか感情を伴ってゆく―――

それは悪酔いして墜ちてく感覚にも似て‥‥
オレは更なる眩暈に見舞われる。

好き―――って。
もっと優しいモノだと思っていた。

恋―――って。
もっと甘いモノだと思っていた。

苦しくて・切なくて‥‥逢えないと寂しくて。
逢えると‥困惑してしまう。

あの女性(ひと)の存在を知ってから。

オレはあいつと逢うひとときが苦しくなってしまった。

なのに。

小さな口づけが躰に焔を灯すと、オレは何も考えられなくなってしまう。
眩暈のような熱い奔流がすべてを支配してしまうから。

このひとときが永遠で在ればいいのに―――

何度そう願ったか知れない。

闇夜の逢瀬は、あいつにとって、単なる捌け口であっても。
オレには――あいつの心に触れる大切なひとときだから。

逢う度カウントダウンされてゆく逢瀬―――

カウントがゼロとなった時、この眩暈の様な感覚から、オレは解放されるのだろうか?

その時オレは―――――






2004/7/2

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