霧雨の午後―――ソロ



シトシト降る雨に足止めされて。ちょうど辿り着いた集落へと踏み入れた。

古びた小屋が幾つか建ち並んだ深い森の一角。

そこは随分前に打ち捨てられたようで。人気がまるで残ってなかった。

「まあとりあえず、雨露凌げればいいじゃない。」

「そうね…」

マーニャ・アリーナの言葉に一同も頷く。

少々埃っぽいのは我慢して。

オレ達は小休止する事となった。

最近の部屋割同様に、3ヶ所に別れての雨宿り。

オレはクリフト・ピサロと一緒の小屋。

「これくらいの雨で足止めか?」

「‥うん。まあ休まないで進んじゃう時もあるけど。
 
 上手く雨宿り出来るなら、そうしちゃうかな。」

呆れ顔のピサロに、古びた木の椅子に腰掛けながらのんびり答えた。

「ちょうど良い骨休‥ですよね。」

「そうだね…。

 あ‥そうだ。これ‥食べる?」

携帯している腰のポーチから、オレはガサゴソ包みを取り出した。

「あのね‥金平糖なの。」

トゲトゲの粒を手のひらに乗せて差し出すと、少しの間が出来る。

小さな吐息の後、2人はそれぞれ1粒ずつ取って行った。

オレも1粒だけ反対の手で摘み、口へとほおる。

ポリポリ噛み砕くと、ほんわりした甘味が口内に広がった。

「美味しいv」

にんまり笑みがこぼれる。オレは続いてもう1粒ほおばった。

ぽりぽりぽり…

しとしと降る雨音をバックに、薄暗い室内に軽い音が響く。

ピサロもクリフトも銘々適当な場所に腰を落ち着けて、手の中の棘粒を口に含んだ。

「…甘い。」

ピサロが苦いものでも含んだかのように、顔を顰める。

「ピサロさんは甘い物苦手なんですね。」

クスッと微笑むクリフトに、彼が一層苦い顔を向けた。

「‥ソロ。」

ピサロに手招きされて、オレは腰を浮かせて彼の元へ向かう。

「なに…っ‥‥!?」

すっと伸ばされた手が肩を掴んだかと思うと、ぐいと引き寄せられ、口接けられた。

するりと忍び込まれた口内に、甘い香りが広がる。…金平糖だ。

「‥もう。いらないなら、最初から食べなきゃいいだろ?」

口移しに戻されて、オレは朱に染まった顔を膨らませ、口を尖らせた。

そのまま踵を返して元の席に戻ろうとしたオレだったが。

再びオレへと手を差し伸ばしたピサロに、背後から抱き寄せられてしまった。

すとん…と彼の膝の上に座らされ、慌てて退こうと足に力を入れるが、更に強い力に

阻まれてしまう。

「っもう、なんだよ? …っ、ん‥‥」

顎を抑えられて、オレはまたこいつに口接けられてしまった。

今度は執拗に口腔を貪ってくる。

…そんなにされたら‥

「ん‥っふ…ぁ‥‥もう‥なに、すんだよぉ…」

「口直しだ。」

真っ赤に火照った顔で吐息雑じりにしゃべるオレに、しれっとピサロが答える。

「ば‥かぁ…。昼間っから、変なコトしないでよ…」

腕を突っ張り離れようとしたが、情欲を煽るような接吻にあてられて、上手く力が入らない。

「ソロはすっかりその気にさせられちゃったんですね。」

す‥と髪が優しく撫ぜられたかと思うと、すぐ前にとやって来ていたクリフトが微笑んだ。

「クリフト…。ピサロったらね…って、あの‥クリフト…?」

髪を梳るよう滑った手が、オレの頬を包み込む。

身体を屈めたクリフトが、頬へ唇を落とし、うなじにもキスを落とした。

「‥まあ。しばらく雨は止みそうにありませんしね。ゆっくりしましょう。」

「え‥? え…?」

普段はあまり会話してないのに。こういう時だけ2人の動作は阿吽の呼吸をみせる。

惑うオレを余所に、2人はオレの服をすっかり剥いてしまった。



雨の匂いと埃の匂いに包まれた古びた小屋で。

奇妙な午後が過ぎる。

しとしと降り続く雨が、すべてを包んでくれるから‥

そんなひとときも悪くないかも知れない。

だって‥‥

ほんのひとときだもの。

あたたかい温もりに浸っていられるのは…

そう自身へ言い訳しながら。熱情に酔わされた。


霧雨の午後。内緒の話。

3人だけの秘密の時間…







2006/6/28
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