刹那に叫ぶ―――ソロ




苦しくて心潰れる思いとは、こういうコトなのだと、

押し潰されそうな胸に手を添え、オレはその光景を見つめていた。

触れるコトの叶わない、苦い光景。

けれど…目を背けるコトも出来なくて。

食い入るように見守る。

緑の原。不穏な空気と哀しみが入り混じる。

その中心に在るのは、桜色の髪の儚い少女と彼女に負けない流れる銀髪の主―――


『ピサロ…』


心ない人間に乱暴された少女を気遣い抱き上げた

‥そんな彼の優しい仕草が胸に冷たく突き刺さる。

自分だって、もしあの場に居合わせたら、同じようにしてたろう

…と理解する心とは別に、込み上げて来る想いがある。

そんなの、最初から理解ってた。

自分はただの吐け口で。都合良く利用されているんだって…。

本当の本当に彼が思うのは…悪意の存在から隠すように匿う彼女なのだと、理解っていた。


なのに―――


労りの伝わる仕草で彼女に接する姿が…痛い

自分に向けられたコトのない、優しい眼差しが…苦しい

氷塊が鳩尾からずう〜んと広がってゆくのを覚えて、息が詰まる。

凍えてゆく自分を持て余してた、そんなオレの気持ちなんか関係なしに、

時は残酷に刻まれて儚い少女はその生を綴じた‥

瞬間湧き上がった魂の揺らぎ。

その哀しみの深さを理解する程、オレは絶望に打ちひしがれた。

オレの想いなんか‥

オレの存在なんか‥

あいつのどこにもありはしない…!


気づいてよ…    (少しでも‥思ってくれるなら‥!


声にならない声を振り絞る。


オレを見て…!!  (オレはここに居るんだ!)   


刹那に叫んだ言葉は、大気に触れるコトもなく、凍った心だけ震わせた―――




2007/7/14

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