「…ロナ。すげ‥綺麗だ‥‥‥」

母親にもその旨を伝えると、風呂から戻ったばかりのローナを部屋に引き込んで、何やら

バタバタする事、およそ一刻。達成感に紅潮した母が部屋から出て、促されるよう娘が続

いた。

真っ白なドレス姿に身を包んで、照れてるのか俯きがちに姿を現したローナ。

柔らかな翠の巻き髪を白いリボンと編み込んでまとめた髪が少し大人っぽさを演出して…

アレスはごくんと息を飲んだ。思いがけない姿。初めてのドレス姿―――

「…似合わない、でしょう‥?」

スカート自体滅多に身につけないローナが、ロングドレスなど不似合いと微苦笑する。

「似合ってる。…綺麗だよ。」

一歩前へと踏み出したアレスが、そっと抱き寄せた。

「ああ‥本当にな。綺麗だよ、ローナ。なあ、母さん。」

「ええそうでしょうとも。用意して置いて本当に良かったわ。」

「‥母さん。父さんも‥ありがとう。嬉しいわ…本当に‥‥‥」

内緒で居る事をどこか心苦しく感じてた彼女が、微笑みながら涙を落とす。

「アレス、ローナ、本当におめでとう。

 2人とも‥これからも仲良く協力し合って行くのよ?」

「どんな困難も2人で立ち向かうんだぞ。出来るな‥?」

コク‥とローナが涙を溜めた瞳で頷いて、隣に立つアレスも神妙に頷いた。

「大丈夫。父さん達みたいに、上手くやるからさ。な、ロナ?」

「うん。きっと役目を果たして、帰るからね!」

「無理はしないのよ?」

「平気。だってアレスが居るもの。一番口喧しいのよ、そーゆーコトに。」

「ロナはすぐ無茶するからな。」

互いに顔を見合わせて、クスクスと笑い出す。見守って居た両親も相好を崩した。



そんな両親の前で、誓いの儀式めいたものを行って、家族4人揃っての食事が始まった。

アレス・ローナそれぞれの好物を中心とした御馳走に、絶えない笑顔。

オレンジの明かりに包まれた優しい空間での、賑やかな食卓だった―――




「あの…ね‥」

アレスはローナを連れて自室へと戻った。

両親の部屋から一番遠い場所でもあるその部屋に、ローナが入ったのは1年以上も前。

躊躇する彼女を促して、アレスも部屋へと入る。

扉を閉めると、戸口で足を止めてしまった彼女を引き寄せ、唇を奪った。

「…ん。もぉ‥アレスってば。」

「なんだ‥?」

「ムードなぁい…」

むう…と膨れっ面で不服を述べるローナに、アレスが苦い顔を浮かべる。

「‥悪かったな。煮詰まっててさ…」

ぽそ‥と落とすと、今度はクスクス彼女が声を立てて笑った。

アレスはそんな彼女の膝裏をまとめて腕に抱え込んで、ふわり抱き上げた。

横抱きにした格好で、ぽかんと見つめる瞳に柔らかく微笑む。

そして、ほんの数歩で到着してしまったベッドの上に彼女を降ろした。

「‥誓いの言葉なんかも、また必要なのかな、お姫さま…?」

自らもベッドに身を乗り上げたアレスが、組伏すよう覆い被さり問いかけた。

「…後でもいいわ。今は‥‥」

言いながら、広い彼の肩口に腕を回して、唇が触れ合う距離で囁く。

口元で笑んだアレスが、了承を示すよう瞳を眇めさせて、彼女の薔薇色の頬へキスを落と

し、唇を重ねさせた。

しっとり重ねられた唇を優しくノックすると、ほんの少しだけ隙間が作られる。アレスは

そこからそっと舌を忍び込ませると、緩く口内を巡らせた。

まだ余り得意でないせいか、疑固地なく受け止める彼女に知らず頬が緩む。

アレスは深追いせぬまま唇を解放すると、首筋や耳元へも唇を落とした。

「‥な。これ‥外しちまっても、いい?」

両耳に揺れるスライム型のピアス。その片方を手の中で転がしながら、アレスが訊ねる。

「…ん、いいけど‥」

不思議そうに答える彼女の了承を得て、アレスが丁寧にそれを外し、机上へ置いた。

「あっ‥ん。」

そっと耳たぶへと触れていた手が離れたと思うと、柔らかく食む。

ゾクンと身を悸わせる彼女の声が甘く鼓膜を刺激して、衝動が突き上げた。

形の良い胸を、その感触を愉しむように、服の上からゆっくり揉んで、ズッと一気に降ろ

す。プルンと揺れた乳房が露になると、今度は直に触れる感触を確かめるよう、やわやわ

揉み解してきた。

「‥んっ、なんか…変な感じ‥‥‥」

真っ赤に染めた頬に手の甲を当てて、ローナが遠慮がちに紡ぐ。

「…変て?」

「‥擽ったくて…むずむずする‥」

「気持ち良くねえ‥?」

「‥‥わかんない。アレスは…楽しいの?」

胸へ吸い付いたまま離れない手のひらが、なんとなく不思議で、ローナがぼんやり問うた。

「ああ‥楽しい。ロナの胸、すっごく柔らかくて美味しそう‥v」

「あ‥っん、あ‥アレス、それ‥駄目ぇ‥‥」                  
身動ぎ→みじろぎ
               
ぱくんと先端を口に含んでしまわれて、ローナが身動ぎ、艶帯びた声を発した。

湿った口内に導かれてしまった乳首を、丹念に舌が舐めまわす。時折きゅっと吸われて、

ゾクゾクと肌が粟立つのを覚えた。

「ひゃ‥!? ああ‥そこも‥駄目‥だよ‥‥‥」

ローナがバタバタ身動いだ拍子に、巻スカートの割れ目から、スラっとした脚が飛び出し

て。アレスが露になったその布の切れ目へ手を差し入れた。

太股の内側を滑った手が、付け根まで上がってくる。それがあまりにも恥ずかしくて、彼

女が泣きを入れるような声を絞り出した。

「‥本当に‥駄目?」

目線を彼女と同じ位置まで伸び上がらせたアレスが、窺うよう訊ねる。

「‥‥うう。…駄目‥じゃない、けど‥‥アレスの意地悪…」

どこか淋しげな瞳で見つめられて、ローナが口を尖らせ、瞼を伏せた。

薔薇色に染まった目元に小さなキスを贈って、アレスがこっそり囁きかける。

「ロナが可愛いからだろ‥?」

「んっ…。あ‥‥、ふぅ‥‥‥」

息のかかった耳とは反対の耳朶を悪戯な指先が弄んで。首から鎖骨へ下って行った唇が、

刻印を落とし、離れる。そして、同じように耳から下った指先は、胸の膨らみの頂点へ到

達すると、乳房全体をふわりと包んだ。

やわやわと撫でてくる感触は、先程とそう変わらない筈なのに。胸の奥にツキンと何かが

走る。逸る動悸に急かされるような、奇妙な感慨。

「アレス…あっ、あ‥ん‥‥」

先刻と違って、あっさり胸から離れた手は腰元に下り、スカートを腰で止めてるリボンを

アレスは解いた。巻スカートは、ハラリと彼女の躰を離れ、シーツへと落ちる。

残った真っ白なチューブトップは、普段身につけている青緑の服より裾が広く、丈も長め

で、ミニスカートを思わせたが‥

片足を間に割り込ませていたので、自然と投げ出された彼女の脚が開いていて、ショーツ

まで窺えてしまっていた。
                                                
 誘る→そそる  
誘る光景に、更に淫らなモノを求めて、アレスがぐいっと裾をたくし上げる。

「きゃ‥、あ‥そんなトコ‥やんっ…」

白いショーツの上から、中指が中心の窪みを辿ったので、ローナがびっくり身動いだ。

「アレス〜、もう‥恥ずかしいよ‥‥‥」

べそっと泣き出しそうな声で、ローナが訴える。

「…お嫁さんに、なってくれるんだろう?」

「…そ‥だけど。でもぉ‥こんな、恥ずかしいなんて…思わないもん。」

「ロナは俺が好きか?」

「うん、大好き。アレス。」

「俺もロナが好きだ。‥愛してる。だから‥1つになりたい‥‥ずっと、思ってた。」

「うん‥ロナも、そう思ったの。…私、変じゃ‥ない?」

「全然。綺麗だよ…ロナは。だから‥全部見せて。俺に委ねてくれよ。」

熱のこもった言葉に、ローナは小さく頷いて、少し躰を起こした。

「…うん、いいよ。アレスなら‥。でもね…アレスだって、同じだよ?」

まだほとんど着崩れていない彼へ、不服顔を浮かべて、脱ぐよう促す。

アレスは苦笑しつつ了承を示して、さっさと脱ぎ始めた。



「…大丈夫か、ロナ?」

互いの温もりを分かち合いながら、恥ずかしがる彼女を宥め賺して本懐を遂げたアレスが、

気遣うよう声をかける。

「‥うん、大丈‥夫…っ、イタ…」

「ごめんな‥余裕なくて、さ。」

「ん〜ん。痛いけど…でも、平気。すごく‥すご〜く、不思議な感じなの‥」

きゅっと彼の広い肩へ回した腕を引き寄せて、密着度を増したローナが安堵の笑みをもら

した。

「ああ‥そうだな。…な、ロナ。もっと痛くしたら‥勘弁な…」

「え‥? あっ‥、あ‥ああっ‥‥‥!」

どこか苦しげに微苦笑ったアレスはそう前置きすると、律動を開始した。

緩やかな出入りとは違う、その予期しなかった動きに、ただ引きずられるようなローナ

だったが。慣れない感覚に覚える痛みとは別に、不思議な情動が込み上げてくる。

すぐ耳元で聴こえる、忙しい息遣いと、じわり滲む汗。そんな彼の熱を受け止めて、彼の

リズムを躰が刻む度、湧き起こる甘い疼き。

甘く艶めいた嬌声がぽろぽろ零れ始めると、ローナが痛みばかりでいる訳でもないと知り、

アレスはその充足感に頬を緩めさせた。

やがて大きな律動の果てに、その熱を注ぎ込んで、アレスは大きな息の後、彼女の上に圧

し罹った。

満足顔で目を閉じるアレスの横顔を、ローナが擽ったい想いで見守る。

いろいろ予想とは違っていたけれど。

でも‥これで本当に、お嫁さんになったのだ――との感慨に耽って、夢見心地で瞳を閉ざ

したのだった。





翌日。

2人は長ノームに呼ばれ、その館へと足を運んだ。

「17歳おめでとう、アレス、ローナ。」

「ありがとうございます。」

年老いた長にローナがにっこり微笑んだ。

「昨日は1日楽しんで来たかい?」

余り有り難くなさそうなアレスには構わず、長が続けた。

「ええ。わがまま言ってごめんなさい、長。」

「いやいや。旅立ってしまえば、そうした時間も取れまいて。お前達にはこれから大変な

 試練が待ち構えて居るのだからの。」

「…勇者として、旅立たなくちゃいけないのね?」

穏やかに言う長に、緊張を走らせたローナが固い表情で見つめる。

「そうだ‥。悪の帝王復活を阻止する使命を、勇者は負っているのだよ。ただ…」

ノーム老が難しい顔を浮かべた。

「わしらには、とうとうお前達のどちらが、伝説の勇者なのか解らぬまま来てしまった。」

「いいの。気を遣わなくても。‥知ってるのよ、私。みんな‥アレスが勇者だって思って

 るんでしょう?」

「ローナ…」

「でもね‥そんなの別に、どちらだって構わないの。だって‥どちらにせよ、2人一緒に

 旅立つつもりで居るのだから…。ね、アレス?」

「ああ‥。本当はロナを危ない目に遭わせたくないんだが‥。離れて居る方が余程危なっ

 かしいだろう、こいつは。」

それまで黙っていたアレスが、隣に座る彼女を軽く小突いた。

「ああ‥酷い。私だって、結構強くなってるんだから! アレスの方が余程頼りないもん。

旅はね、強いだけじゃいけないのよ? 知らない土地の人とだって仲良くなれないとい

 けないんだもの。ね、長?」

「ふぉっふぉっふぉ‥。そうだのう…。

 ま‥確かにの。お前達が共に旅立ってくれた方が、わしらも安心だわい。」





早速旅立ちの準備をする事になり、2人は家路に向かって、明るい日差しの中を歩いてい

た。共に旅立つ許可を貰い、安堵の表情で明るく話すローナにアレスが相槌を打つ…

そんなよくある光景は、完全休業状態だった宿屋の前で終わりを告げた。

「…どうしたの、アレス?」

ふと険しい表情で立ち止まった彼に、ローナが声をかける。

「‥いや。ロナは先に家に戻ってろ。少し用を思い出した。」

「‥あ、うん。いいけど…」

「まっすぐ帰れよ? 寄り道なんかしねーで。」

「クスクス‥。やあね。寄り道なんてしようがないじゃない。」

ローナが一笑して返す。アレスはもう一度念を押すと、里の外れに向かって走り出した。



「はあ…はあ…っ。」

アレスは里の外れの樹に手をついて、乱れた息を整えていた。

ドクンドクン…嫌な汗がじわりと滲み、動悸がなかなか治まらない。

宿から感じられた凶凶しい気配。なにもかも押し殺したように在る気配だったが‥それが

反って不気味なモノを感じさせて…ヒヤリと冷気を浴びせられたようだった。



――アレに見つかる訳には行かない。



本能がそう強く警告を発していた。



(…捜しに来たのか‥?)

伝説の勇者を‥そう思った瞬間、光と闇の狭間の光景がふと脳裏に浮かんだ。

強烈な光の下に広がる漆黒の闇。その狭間でたゆたう小さなオーブと己の意識が交わる。



『‥俺は誰の指図も受けない! 好きにさせて貰うぜ!』



何者かに喧嘩を売るよう声を荒げて、会話を一方的に切り上げる。

次に見えたのは、惑う眸の老婆だった。

赤子を抱き、困惑げにみつめる老婆が口を開く。

アレス…そう紡がれたのを最後に、オーブの意識は途絶えた。



「…そうか。成る程な‥」

アレスは苦々しく独りごちると、きつい眼差しを里へ向けた。

宿屋から感じられる突き刺すような気配。

それが魔族――特に高位魔族と呼ばれる種族のそれだろうと、察しがついた。

そう…自分は知って居るのだ。

あれらの気配。そして――

アレスはグッと拳を握り締めると、踵を返し、ひらり‥と結界の境界を示す柵を乗り越え

た。

里の外。

結界から外れた場所で、空を見上げて口元に輪を描いた指を差し入れ、指笛を吹いた。

甲高い済んだ音色は、鳥の声にも似て、雲が広がってきた空に融けて行った。

やがて。金の光がまっすぐ彼へ向かってやって来た。

姿が視認出来る距離まで近づくと、それが金色の光を纏った鷹である事が窺える。

アレスは上空で弧を描く鷹を見つめ、肘をぐっと曲げて空に突き上げた。

その動作に呼応したように、金色の鷹が彼の腕へと舞い降りる。

烏よりも一回り小さな鷹は、「クウ‥」と小さく鳴いた。

「‥久しぶりだな、ディー。早速で悪いが、調べて欲しい‥‥‥」

アレスは何事かを小声で伝えると、鷹は小さく鳴いて、再び空へ舞い上がった。

「頼んだぞ…!」



空へ融けた金色の光が、その痕跡を失くす。

アレスは重い吐息を落とすと、ざわざわとした気配が近づいて来てる事を確認して、もう

1つ吐息を落とした。

「‥時間は、ないな…」

そう呟いて、アレスは里に再び戻って行った。