「ん〜と、こんな感じでいいのかな‥」

ソロは湯煎にかけてるボールの中のチョコの溶け具合を確かめるように、ヘラをぐるりと一周させた。

「うん‥ちゃんと溶けてる溶けてる。‥このままでも美味しそうだな‥」

甘い香りがふわんと鼻孔を擽って。ソロはにんまりと笑みを浮かべた。



今日はバレンタインデー。

ここは、例の件の折り3人で過ごした山の中の別荘。

ソロはクリフトとピサロに、例の件の感謝も込めてチョコを贈ろうと、単身この館にやって来て、

せっせと作業に励んでいた。

2人に内緒でやって来たのは、ビックリさせたかったから。

喜んでくれるかな‥思いながらヘラでかき回して、ソロは顔を綻ばせる。

マーニャとミネアに手作りの簡単レシピも教わったので。きっと上手くいく‥そう自信たっぷりに、

ソロは用意した生クリームを投入した。

嵩が増えてもったりしたチョコクリームをゆっくり掻き混ぜ続けながら、一口味見。

「うん‥美味しいv」

まだ柔らかいチョコクリームが口内で溶けるのをうっとり味わって、ソロは洋酒の瓶を手に取った。

教わった分量を注いで、掻き混ぜる。きれいに混ざったのを確認したソロは、う〜んと悩ましげに

小首を傾げた。

ピサロもクリフトも、自分と違って実は甘い物が苦手なのを、ソロは知ってる。

そして‥2人とも自分と違って、アルコールに強い。

「…これじゃ、足りなくないかなあ?」

先に投入した生クリームよりも少ない量なのが気になって、ソロはぽつんとこぼした。

「2人ともお酒好きだし。うん、もっと入れちゃえ。」

ソロはそう決断すると、ドボボボ‥と先程の倍以上、洋酒を追加してしまった。

「あれ‥? 入れ過ぎちゃったかな?」

もったりしていたクリームが、サラリと軽くなってしまって。ソロは眉を寄せた。

「ちゃんと‥固まるかなあ…これ‥」

ハラハラ‥と、ソロは泡立て器に持ち替え、掻き混ぜ始めた。



さて一方。

女の子達と買い物に行ってるとばかり思っていたソロの姿が町にないのを気づいたピサロが、

クリフトと共にマーニャに詰め寄っていた。

「だからあ‥買い物は確かに一緒したけど。その後ソロとは別れたのよ。用事があるって

 行ってね。荷物持って、走って行っちゃったの。」

「どこへ向かうか聞かなかったのか?」

「聞かないわよ。まあ‥そのうち戻って来るでしょう。ゆっくり待ってなさいって。」

にやにや〜とマーニャが怒るピサロの肩を軽く叩いた。

その意味ありげな態度に、クリフトが嘆息した。

「‥今日はバレンタインでしたね。買い物ってもしや‥」

「まあまあ。ソロの気持ちなんだからさ。気づかぬふりで待っててあげてよ。」

マーニャの表情を窺うクリフトに、彼女はクススと笑って返す。そのまま彼女はひらひら

手を降って、アリーナ達の待つ食堂へと戻って行った。

「…で。結局ソロはどこに行ったんだ?」

2人の会話が要領掴めぬままだったピサロが、苦々しく口を開いた。



クリフトはさっくりとバレンタインについて説明して。

ついでにソロが考えている事も、あくまで予測だが‥と解説した。

「手作りチョコを作りに出掛けただと? どこへだ?」

「うう〜ん‥食堂の厨房を借りている様子はありませんでしたから‥町の外へ向かったん

 ですかねえ‥。そうなると…」

料理が出来る場所として適しそうな所は1つしか浮かばない。

「あの館か‥!」

ピサロもソロの目的を理解して、そう返した。

「どうします? 迎えに行きましょうか‥?」

マーニャの口ぶりだと、ここで待っててあげた方が良いようだったが。1人にしてるのが

心配なのもあって、クリフトは魔王を覗った。

「‥ああ。何があるか分からないしな。様子だけでも見て来るぞ。」

「ですね。そっと窺って、問題なさそうなら引き返せばいいのですし‥」

2人は頷き合うと、ピサロの移動呪文で町を後にした。





「うう〜ん‥やっぱり固まらないな‥」

館の厨房。ボールの底を冷やしながら、泡立て器で掻き混ぜ続けていたソロが、悔しげに

こぼす。味は悪くない‥と思うのだ。でも柔らかすぎると丸い形に作れない。

ソロはガツガツと、泡立て器で撹拌を続ける。

ちょっとムキになり過ぎて。うっかり手を滑らせたソロは、ボールが変に傾いだのを支え

ようと焦って、逆にうっかりぶちまけてしまった。

「うわあ〜」

ドッタンガシャン‥ガラガラガラ…

「なんだ?!」

「行って見ましょう!」

館に着いて、こっそり様子を見ようと厨房へ向かっていた2人は、派手な物音に弾かれた

ように、急ぎ走った。



「うわあ‥ドロドロだ。」

尻餅ついたソロが、顔やエプロンに飛び散ったチョコクリームを見ながら一人ごちる。

「ソロ、どーした!?」

「え‥ピサロ? クリフトも‥」

バタンと扉が開いたと思うと、血相変えたピサロが滑り込んで来た。

その後ろにはクリフトの姿もあって。ソロはキョトンと不思議そうに2人を眺めた。

「大丈夫ですか‥ソロ。」

ゆっくり近づいて来たクリフトが、ソロの前で膝を着くと、心配そうに声をかけた。

「あ…うん。オレは平気。だけど…」

ボールの中身が半分になってしまったと、引っ繰り返してしまった現状を苦く報告する。

「せっかく作ったのに‥なんか上手く固まらなくてさ。そしたら‥こんな…

 2人にね、美味しいチョコ贈りたかったんだ…なのに‥‥‥」

「ありがとうございます、ソロ‥」

ガッカリ話すソロに笑んで、クリフトはソロの頬に飛んでたチョコをペロリと舐めた。

「本当だ。美味しく出来てますね、これは。」

「ちゃんと固まらなかったし。いっぱいこぼしちゃったし‥」

「でも‥これはこれで。嬉しい贈り物ですよ。」

眉を寄せて、泣くのを堪えるようなソロに、クリフトが柔らかく微笑んだ。

「私達に食べてくれと作って下さったのでしょう‥?」

「え‥うん…」

『食べて』の部分が妙に艶めいて聞こえて。ソロがほんのり頬を染める。

「今のソロ、とても美味しそうですよ?」

耳元で囁かれたソロが、かあっと顔を赤らめた。

「確かにな。甘い菓子は苦手だが‥これなら私も喜んで貰うぞ。」

言って跪いたピサロが、ソロの手に付いたチョコを舐め取った。

「ピサロ‥あっ、ちょ‥‥っ、う‥ん‥‥‥ま、待っ‥てよ‥」

丹念に指を1本1本舐められて、ゾクゾクと悸えが走る。止めに入ってくれないかと、

クリフトを見やれば、エプロンの上に落ちてた固まりをすくい上げ、口へ運んでいる。

その仕草にドクンと鼓動が跳ねた。

「‥では、ゆっくり賞味出来る場所へ移るとしようか。」

ソロがぼーっとしてる間にエプロンを外した魔王が、ソロを抱えて立ち上がった。



「え‥と。なんで、ここなの‥?」

てっきり寝室に向かうのかと思ったソロだったが。連れて来られたのは1階の広間だった。

応接セットのある方へと真っすぐ向かったピサロが、ローテーブルの上にソロを降ろす。

「私達に食べさせてくれるのだろう‥?」

ピサロがクリフトの持つチョコクリームの入ったボールを目で指し口角を上げた。

「え‥うん。そのつもりだったけど…。うわっ‥ぷ、‥え‥‥? な‥なに…?」

上着を剥ぎ取られたと思うと、ソロはそのままテーブルに背を押し付けられてしまった。

冷んやりした感触が小さな翼を震わせる。ソロは困惑顔で両者を眺めた。

「せっかくのソロの心づくしですから。美味しく頂こうと思いまして‥」

にっこり笑ったクリフトが、そう言って膝を折ると、抱えていたボールに残るチョコをヘラ

で掬った。

「うわ‥冷た‥っ。ちょっとぉ‥クリフト、これ‥‥」

胸の上にこんもり盛られたチョコを、ペタペタとヘラで平らにして行く。

歌でも口ずさみそうな様子で、クリフトは左右の胸にチョココーティングを施した。

「‥貴様も容赦ないな。」

「魔王さんだって、手伝って下さったじゃないですか。」

苦笑滲ませる魔王に、神官がにっこり答える。ソロは文句を言おうと上体を起こしかけた

のだが、左右の肩をピサロとクリフトが押さえてしまったので、動けなくなってしまった。

「では‥遠慮なく‥」

頂きます‥と言いながら、クリフトが唇を寄せてゆく。

「も‥っ、あ‥っ、ち‥、やん‥‥‥」

テーブルに縫い止められたソロの左右の胸に、同時に唇が降りて来て。ソロが躰を跳ね

させた。抗議が上手く言葉にならず、甘い吐息がこぼれてしまう。

いろいろと、文句を言いたいソロだったが。2人の口に入ってるのを見ていると、一応努力

が無駄にならずに済んだ事に安堵も覚える。

「‥あの‥ね。‥美味しい…?」

呼吸をどうにか整えつつ、ソロが訊ねた。

「ああ‥。お前も食うか?」

顔を上げたピサロに、ソロが頷く。ピサロは一塊を舌で掬い上げると、ソロに口接けた。

甘く蕩けるチョコは、洋酒の香りが鼻孔を擽って、喉を焦がすように通って行く。

「ね‥もっと‥‥」

濃密な口接けが解かれると、ソロは熱っぽく潤んだ眸を注ぎ強求った。

「ソロ‥」

声に振り向いたソロが、クリフトの口接けに応えた。

「ん‥ふ‥‥あ‥んっ‥‥」

熱い口腔の中で蕩けるチョコを味わうように、睦み合っていると、芯を持った胸の先端を

ピサロが食んだ。ピクンと躰を跳ねさせるソロに、魔王は軽く歯を立てる。更に汗ばむ腹を

滑っていった指先が、横腹を通って、下穿きをズボンごと降ろしてしまった。既に窮屈さを

覚えてた下芯が開放されて、ソロはブルリと躰を震わせた。

「あっ‥やん‥」

つんつんと中心をつつかれて、ソロがもじもじ脚を動かした。

「こちらも賞味させて貰おうか。」

口の端で笑んだピサロが、樹液の滴る幹に指を滑らせクツクツ笑う。

「も‥バカ‥ぁ。ひ‥ぁんっ、ああっ‥‥‥」

揶揄い声に眉を下げたソロだったが。それで彼が躊躇する筈もなく、パクンと口内に導かれ

てしまった。鳩尾にあった熱が一気に全身駆け巡るような感覚に、ソロが背を反らせる。

「私はこちらを頂きますね。」

そう笑って、クリフトが胸に残るチョコを丹念に舐め始めた。

「ひゃう‥はあ‥っ、ん…も、ああっ‥‥‥」

体温で溶けてるのか、更に柔らかさが増してるチョコクリームを舐め取る感触に、肌が

粟立つ。ねっとりした粘膜に包まれた中心の熱と、肌の騒めきが重なり合って、ソロは

ゾクゾクと全身を震わせた。

「熱‥いよ…ああっ‥ピサロっ、オレもう‥‥っ…」

ドクンと弾けた昂ぶりを受け止めたピサロが飲み干す。きれいに平らげると、満足顔で幹を

開放した。

「はあ‥はあ‥」

肩で息をするソロが、グッタリと躰を弛緩させる。

「ピサロさん、そちらもちゃんと完食して下さいね。」

「ああ、そうだったな‥」

のほほんとしたやり取りの後、ピサロがすっかり溶けて流れ出したチョコに舌を這わせた。

「あん‥も、ちょっと休ませてよぉ‥」

「何言ってるんですか、ソロ。根を上げるのが早過ぎますよ。本番はこれからでしょう?」

「だってえ‥お腹空いて来たし…」

クッタリしたまま答えるソロに、クリフトが「ああ」と納得顔で頷く。

「そういえば‥丁度おやつタイムですね、ソロの。」

町に滞在中、昼と夜の飯の間に必ず設けている、ソロの大切な時間がソレだ。

「ソロもこれ、召し上がります?」

クリフトは脇に置いてあったボールを取り、容器に残るチョコを指で掬い上げた。

「食べる。」

即答したソロが、ああ〜んと口を開いて催促した。

「はい、どうぞ。」

差し出された指を、ソロはパクンとほお張った。甘いチョコをもぐもぐ含んで、指がきれい

になるまで舐め取るソロに、クリフトが微笑する。

「もっといかがですか?」

「食べる。」

ソロは餌を待つ雛のように、チョコのお代わりを強求った。

「‥何を始めたのかと思ったら…」

胸から流れていたチョコをきれいに舐め取ったピサロが顔を起こすと、妙な事を始めた神官に

呆れ顔を向けた。

「いえ‥なんだか面白くて。ピサロさんもやります?」

スッと差し出されたボールに、ピサロも指を突っ込んだ。チョコを乗せた指をソロの口元に

持って行くと、パクンとソロがほお張る。きれいに舐め取るまで離さないようで。ピサロが

そんなソロの様子をしげしげ眺めた。

「…酔ってるのか?」

「みたいですね。これ、結構強い酒使ってるみたいですし…」

「確かにな…まあ、これはこれで興味深い‥」

ふう‥と嘆息した後、ピサロは次を待ち侘びるソロにチョコを運んでやった。



すっかり親鳥になった気分で。チョコをせっせと運んだので。あっと言う間にボールに残った

チョコはきれいになくなってしまった。

もう終わりだと告げるピサロに、ソロは駄々を捏ねるよう強求ったが。チョコより甘いものを

やると、濃厚な口接けを施した。

「…んん‥ふあ…っ、はあ‥‥‥」

長い口接けが解かれると、ソロは不足した酸素を取り込もうと深い息をした。

「ひゃん…そこ、ダメぇ‥‥‥」

テーブルに浅く腰掛けてるソロの背にすっと降りた指が、背の中心を滑った後、肩甲骨の辺りに

生えている1対の翼に触れた。白銀にも見える白い小さな翼を、そっと手の中に納めると、

ソロが大きく躰を跳ねさせた。

「ここ‥今日は敏感なんですね。」

クスっと笑みを深めながら、クリフトがビクビク跳ねる小さな翼を指の間に絡めてゆく。

「んっ‥はあっ…クリ‥フトぉ…」

「そんな風に睨まれると、煽ってるように映るだけなんですけどね‥」

そう笑って、背中から抱き締めるよう腕を回したクリフトが、ソロの顎を上げて口接けた。

濃厚な口接けが再びソロを翻弄してる間に、ピサロも彼への愛撫を深めさせてゆく。



全身が熱に浮かされて、どこもかしこも熱かった。

長く臥せった後。衰弱した身体を労るように抱かれるのも心地よかったけれど。

貪るように求められるのは、やはり嬉しい‥



「ピサロ‥クリフト…大好き‥‥‥」



幾度めかの迸りを内奥で受け止めたソロが、意識を飛ばす寸前にそう満足そうに笑んだ。



「愛してますよ‥ソロ。」

「…もう二度と、手放さぬからな‥」



眠りに落ちてゆくソロにそう語りかけるクリフトとピサロが、愛おしげに彼を撫ぜる。

その優しい仕草に誘われるように。ソロは夢の中に身を委ねたのだった―――





2011/2/16
 

 あとがき

バレンタインネタ番外編、日付間に合いませんでしたが、どうにかまとまりました。
チョココーティングしたソロ。なんか想像したら、愉しくなっちゃってw
また普通でないえっちネタに走ってしまいました(^^:

えっちがあまり濃くなるようだったら、裏に潜ろうかと思ってたんですが‥
表現的には途中で逃げちゃったので。こちらにUPしました。
(‥大丈夫だったでしょうか?)

それにしても。
今回書いててしみじみ思ったんですが‥
ソロの所のクリフトって、本当スゴイわw 
だって‥あの魔王さまが常識人に見えるんですものww

なんか勢いでドドっと綴ってしまいましたが。
楽しんで頂ければ幸いですv

ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございました!