正義の味方セット‥の巻



パチパチパチ‥

デスパレスの庭先で焚き火の煙りが上がる。

不審に思ったアドンが向かうと、そこには小さな焚き火をくべる元勇者の姿があった。

「‥ソロさん。何していらっしゃるのですか?」

膝を抱えてしゃがみ込む背中に、アドンはそっと話し掛けた。

「ピサロの代わりに処分してんの。」

長い棒きれで端の物を中心に寄せながら、ソロがぽつっと答える。

アドンは風に煽られ舞った紙片を捕まえると、それが何かを理解し微苦笑した。

「‥そうですか。」

確かに、捨てろとは言われたが。燃やせ‥とまでは言ってなかった。

アドンはなんとも気抜けた返事をして、ソロの隣にしゃがみ込んだ。

「本当にもうっ!

 処分しても処分しても、すぐドッサリ溜まってさ。厭になっちゃう!」

プウとむくれながら、ドスドスと棒きれを火中に突き刺さすソロ。

それにひっそり嘆息して、アドンはおもむろに口を開いた。

「ソロさんが嫁入りして下されば、縁談も持ち込まれなくなりますよ?」

焚き火をかき混ぜるソロの手が止まる。

「‥オレ、男だもん。」

「そんなコト、なんの支障もありません。」

「‥世継ぎだって、産めないし。」

「‥まあ、それは確かに。」

産んだら面白いけど‥などとこっそり考えるアドンが返した。

「でも‥どこかの女が陛下の子を成すのは、厭でしょう?」

「やだ。」

「ならこの際そこは脇に置いといて。

 やはりソロさんが城に落ち着くのが一番かと思いますが。」

現状は通い妻とあまり変わらないので。ピサロとソロの仲は公になってない‥

だからこそ縁談話が切れないのだ。

「‥でも、さ。やっぱり、簡単には行かないもん。」

炎を見つめながら、ソロがぽつんと吐いた。

「オレはよくても、やっぱりさ…」

亡くなった村人の事を思うと、どうしてもふんぎりの着かないソロだ。

深々と溜め息落とすソロに、アドンもそれ以上は言葉を挟まなかった。



ソロが拠点としているのは、故郷の村。

既に滅んだその村に、ポツンと佇む一軒家。そこで独り暮らしていた。

「ソロ‥!」

畑仕事をしていたソロに、やって来た青年が声を掛けた。

「クリフト‥! わあ‥久しぶりだねぇ。元気だった?」

作業の手を止めたソロが笑みを浮かべる。

「ええ。ソロも変わりないですか?」

「うん、元気だよ。」



「はい、どうぞ。」

家へ招き入れたソロがテーブルにお茶を並べて席に着いた。

「珍しいよね。こんな時間に来てくれるなんて‥」

ありがとうと微笑む彼に、ソロもふわりと笑んで返す。

「そうでしたね。」

「今日はゆっくりしていけるの?」

カップを口元に運びながら、ソロが訊ねた。

「そうですね‥まあ、大丈夫だと思いますよ。遣いを頼まれて来たので。」

「遣い‥? 竜の神の?」

「ええ‥まあ。はは‥構えずとも大丈夫ですよ。

多分ソロに悪い話ではないので。」

思わず顔をしかめるソロに、クリフトが安心させるよう微笑む。

「‥ホント? ‥まあクリフトが言うなら、嘘じゃないと思うけど。」

小さく嘆息した後、ソロがクリフトの言葉を待って見つめた。

「ああ‥それはもう1人揃ってからお話します。」

「もう1人? 誰か来るの?」

不思議そうに首を傾げるソロに、クリフトが微笑む。

「ええ‥そうですね。遣いをやったらしいので、多分来てくれますよ。」

「誰が?」

「それは着いてから‥という事で。

 それよりソロ、たまには天にも顔出して下さるようにと、竜の神が仰ってましたよ?」

「だって‥あそこは疲れるんだもん。」

「‥ですよね。あの方も理解っていると思うので、まあ‥彼の意向が伝われば大丈夫

 でしょう。」

「‥竜の神がオレに会いたい‥てんならさ、ここへどうぞって。伝えといて。」

深々嘆息した後、ソロが仕方ない風に答えた。

「そうですね‥。まああれで随分多忙なようですから。

 それも難しいのかも知れませんが‥」

クリフトが戸口を見つめて、口を閉ざした。

ソロが振り返ったと同時に、ノックが届く。

スクっと立ち上がったソロは、パタパタ戸口へ向かった。

はたして。

訪問者はアドンだった。

「あれぇ‥もう1人って、アドンだったの?」

本当に珍しい‥と、迎えたソロは目を丸くさせた。



後から加わったアドンにも茶を出して。

ソロはアドンの対面、クリフトの隣席に腰を下ろした。

「それで、どういったご用件なのでしょうか?」

ソロが席に着くのを見届けてから、アドンがおもむろに口を開いた。

「ええ‥実は、竜の神からこれを託されまして‥」

答えたクリフトが、何やら封印された壺をコトリとテーブルに乗せた。

2人の目が、古びた壺へと注がれる。

「‥なんの壺なの?」

ソロが首を傾げ、訊ねた。

「正義の味方セット‥だそうです。」

「「!!!?」」

ソロとアドンが奇妙な表情で見合わせる。

「正義の味方‥セット? それって何? オレに使え‥って?」

「いえいえ。ソロには必要ないでしょう?」

クリフトはにっこりと返した。なんせ‥

困っている人を見たら、助けるものだと、思うより先に動いてるソロだ。

「まあ‥とにかく。開けてみましょうか。」

首を捻るソロにふわりと笑んで。壺に手を添えたクリフトが、封印の札を掴む。

そのままなんの躊躇いもなく、もう片方の手で剥がしてしまった。

「だ‥大丈夫なの?」

簡単に剥がしてしまって良いのだろうか…とソロがハラハラ訊ねた。

「ええ。封印を解いただけでは発動しないそうなので。」

言いながら、クリフトが壺の中身を取り出した。

ぽふんと置かれたスライム柄の風呂敷包み。

「‥これが‥正義の味方セット‥なの?」

「そうですね。

 オリジナルとは少々違うそうですが、うさみみの刑発動アイテム‥らしいです。」

不思議そうに訊ねるソロに、クリフトがにっこり答えた。

「うさみみの刑‥?」

正義の味方セットに、うさみみの刑‥

謎の言葉の連続。奇妙なアイテム。

無口なアドンが怪訝そうに眉を寄せ、ソロはただただぽかんと覗う。



―――うさみみの刑

 



詳細は、ぷちオンリー新刊にて発行の『うさみみ魔王さま誕生!』を待て♪”
(こちらには、ダイジェスト版を後日UPする予定です)



2008/9/10