「はあ…はあ…。あ‥んっ…」

一気に脱力し、荒い呼吸を繰り返すソロに構わず、彼が放ったものを潤滑に差し入れられ

る指が増やされた。放出された熱流とは別に、蟠る熱が渦巻く箇所を刺激されて、ソロが

躯を撓らせる。

「クリ‥フト…ぉ、ねえ‥早‥く‥っ‥‥」

放ったばかりだというのに、既に余裕ない様子のソロが、瞳を潤ませた。

「せっかちですね、ソロは…」

「ち‥がう、もん。クリフトが‥っ、意地悪なん‥だ。」

くすっと笑われて、ソロがただでさえ赤い顔を染め上げ反論した。

「人聞き悪いですね。こんなに優しくしてるのに。」

ふっと耳朶をくすぐる甘い響きに、ソロがびくんと躯を悸わせる。

そんな様子に目を細めさせながら、するりとシーツへ手を潜り込ませると、背を抱くよう

に滑らせた。

「ひゃ…ん。そこ‥ダメぇ‥やっ‥‥‥」

ぴゃっと躯を跳ねさせるソロが、すすり泣くよう声を震わせる。

「ココ…今日は感じるみたいですね。」

ソロの背中の違和。痛むコトもあれば、今のように敏感な反応を返すコトもある。

どうやらそれらが感情の昂ぶりと関係しているようだと、クリフトはうっすら考えていた。

「クリフトぉ…」

眉根を寄せ、瞳を潤々させたソロが、不服を示すよう恨みがましい目線を送ってきた。

そんな表情見せるから、つい焦らしまくってしまうんだ…とひっそり思うが表に出さず、

クリフトが笑みを返し探春を再開する。

もう大分綻んできた蕾を更に開いてゆくと、彼が自身を宛てがった。

「ふ‥あ‥‥っ、ああ‥‥‥」

ぎゅっと背にしがみつきながら、ソロはゆっくりと穿ってくる熱を受け止めた。

「クリフトっ。クリフト…っ。」

「…ソロ‥」

汗で張り付いた翠の髪を梳き上げ頭部を支えると、クリフトが愛しむよう口接けた。

「ん…ん‥‥‥」

夢中で舌を絡ませ合い、どりらともつかぬ蜜を味わって、名残惜しげに唇が離れてゆく。

銀糸が2人の間を束の間繋ぎ、ゆっくり解けていった。

「好きですよ、ソロ。」

そうひっそり告げて、繋がりを深めたクリフトが、抽挿を開始した。

「ん‥はあ‥っ。あ‥ん…」

躰の奥深くで感じる熱塊が彼を満たしてゆくこの時が、ソロにはひどく安心出来る瞬間だっ

た。時折募る妙な空虚さ。それらが満たされ解放される。だから‥‥

「は‥んっ‥クリフトっ、好き‥‥‥‥!」

彼に取り縋りながら、大きく穿たれた瞬間、ソロは弾けさせた。

やや遅れて極めたクリフトが小さな呻きを落とす。ふ‥と躰を弛緩させたソロが、ゆっく

りベッドへ沈んでゆくのを見守ると、クリフトは静かに身体を起こし、彼の隣へと身体を

横たえさせた。

「クリフト‥。」

和らいだ吐息の後、ソロがかったるそうな手をゆっくりと上げ、彼の頬に添え微笑んだ。

「…ずっと、居るよね? …遠くに‥行かないよね?」

「‥ええ。ずっと側に居ますよ。」

そろそろと伸ばされた手を握り締め、クリフトが微笑む。ふわりと笑む優しい瞳に安心し

たソロが、微笑を返すと、ゆっくり瞳を閉じた。

すう‥と眠り始める彼を見つめるクリフトが、ふと瞳を曇らせる。

柔らかな翠の髪をそっと梳りながら、彼は静かな寝顔を見守った。   梳り→くしけずり

「…遠くに行ってしまったのは、あなたなんですけどね。」

誰にも聞かせぬ呟きを吐息に混ぜる。

『ピサロ』と関わった記憶を閉ざしてしまったソロ。あれ以来彼は真っすぐな瞳をクリフ

トへ向け、甘えてくる。明るく元気‥に見えるソロだったが、忘れた記憶がふと揺さぶら

れるのか、時折ひどく不安定になる。それがどうにも気掛かりでならなかった。



「私はこの城を納めるマスタードラゴン。竜の神と呼ばれている者だ。」

謁見の間。

翌日。朝食を済ませた一行は、兵士に案内されて、この城の主の元を訪れていた。

緊張する一行の前方。玉座に座す緋色の竜の威厳に満ちた声音が響く。

「私はここに居て世界のすべてを知る事が出来る――」

緋色の竜はゆっくりと、導かれし者達へ言葉を伝えた。

「――天空と人間の血を引きし勇者ソロよ!

 そなたなら進化した邪悪な者を倒せるかも知れぬ!

 そなたに私の持てる力を与えよう!」

緋色の竜がそう言い放つと、ソロの脇に置いてあった天空の剣がカタカタ揺れ出した。

剣はそのままゆっくり浮かび上がると、緋の竜とソロの間で安定し、光輝き始めた。

一行が無言のまま、その不思議な光景を見守る。

白い光に包まれた剣が、やがて淡い輝きだけを残すと、ゆっくりソロの手元へ降りた。

「…すごい、力が漲ってくるみたいだ‥!」

そっと剣の柄を握り込むと、力が注ぎ込まれるような、不思議な感慨に包まれる。

ソロがゆっくり顔を上げ、前方の竜と視線を合わせると、ほんの少し彼が目を細めたよう

に見えた。

「‥え‥っと。ありがとう‥ございます。」

「‥‥‥」

「…あの、まだ‥何か?」

もう話は終わりだろうと、退出するつもりで身体を引いたソロだったが、なにやら言いた

げな様子の竜に、気配で呼び止められた。

「…ソロ、そなたには申し伝える事がある。後で私の部屋へ参るが良い。」

「え…? オレ‥に? でも‥‥‥」

不安げに後ろに控えているクリフトへ視線を向けるソロ。

「‥構わぬ。その者と共に参るが良い。」

途惑う彼に嘆息した後、竜の神がそう付け加えた。

「…はい、判りました。」

それ以上我が儘言える筈もなく、ソロは不承不承頷いた。



謁見の間を後にすると、神に呼ばれたソロとクリフト以外の面々は、この城での情報収集

の為散会した。

残された2人が、頑丈そうな扉の前で、ふう〜と大きな溜め息を落とす。

ややあって。やって来た兵士に案内され、2人は城の東にある棟へ足を運んだ。

「それでは。ここで今しばらくお待ち下さい。」

通された部屋は、彼らが泊まった部屋の数倍ありそうな、ゆったりした私室。その調度類

から、王の私室である事を推察したクリフトは、兵士が去ると盛大に溜め息をこぼした。

「なにクリフト。どうかした?」

きょときょと室内を見回していたソロが、隣で大きな吐息が漏れるのを聞き、顔を覗った。

「‥いえ。マスタードラゴンは、ソロに何の用なんですかね‥?」

見当付けていながらも、クリフトはそう彼へ投げかけた。

「…解んない。なんだろうね‥?」

しばらく待つと、入って来たのとは別の扉がカタンと音を立てた。

静かに開いた扉から、肩までかかる金の髪をオールバックになでつけた壮年の紳士が入っ

て来る。瞳の色は翡翠。

「待たせたな。…そんな所で立って居らず、楽にして座りなさい。」

絹らしいゆったりした衣を纏い現れた紳士が、部屋の入口で立ち尽くしている2人に、柔

らかく声をかけた。

「…あの、マスタードラゴン‥ですよね?」

呆気に取られていた2人だったが、どうにか気を取り直したソロが恐る恐る訊ねる。

「そうだが。…この姿が意外かね?」

そう苦笑すると、再度掛けるよう促した。

2人が入ってすぐに目に入ったL字型のソファの一辺に並んで腰掛ける。

それを見届けた紳士は、テーブルのデカンタを手にすると、グラスへ注いだ。

竜の神手ずから注がれた飲み物が、2人の前へ差し出される。

「‥花の蜜のカクテルジュースだ。試してみたまえ。」

途惑う彼らに、ソファの空いてる辺へどっしり腰を降ろした紳士が、説明を加えた。

「…それじゃ、戴きます…」

グラスを取ったソロが口元へ運ぶ。こくん‥と1口含んだかと思うと、ごくごく一気に飲

み干してしまった。緊張ですっかり渇き切っていた喉に潤いが戻ってくる。

「クリフト、これ美味しいよ。」

にぱっと綻んで見せたソロが隣に座る青年へ進めた。

「お代わりはいかがかな?」

「あ‥はい、戴きます。」

今度はちゃんと味わって飲もうと、ソロが空いたグラスを彼へ手渡す。

「‥ありがとうございます。」

またいっぱいに注がれたジュースを受け取ると、こくんと口をつけた。

「クリフト、飲まないの?」

「…私は後で戴きます。それより…」

ソロよりも緊張した様子で、クリフトが堅い表情のまま竜の神へ視線を移した。

それを見たソロも、目的を思い出したように、彼へ視線を送る。

2人に注視された紳士は、改めたよう彼らへ身体を向けて座り直した。

「うむ‥。話というのは、ソロ‥そなたの事だ。」

ごくん‥とソロが息を飲む。その為に呼んだのだろう事は予測していたが、何を言われる

のかと、緊張が全身を包んだ。

「これからそなた達が降りる魔界は、地上よりも深く広い。

 それ故、地上に住まう魔族より、遥かに強力な魔力を持つ者も少なくないのだ。」

竜の神はそこで一旦言葉を切ると、深い吐息をついた。

「…そこへ向かう前に。ソロ、そなたの呪を払わねばならぬ。」

「しゅ…?」

意味が解らずきょとんと返すソロ。クリフトは意外そうに目を見開き、続く言葉を待った。

「そうだ。そなたは村を襲った魔族に呪印を施されて居る。」

「呪印‥?」

「魔族が使う高度呪文の1つでな。狙った獲物等に好んで施すのだ。目印としてな。」

「ええっ!? 魔族がオレに…? 目印ってなんだよ!?」

「ソロ…」

理解出来ないと途惑う彼に、竜の神とクリフトが、ひっそり嘆息する。

竜の神は構わず話を続けた。

「魔族の中には戦闘そのものを愉しむ者も在るからな。強くなったそなたを狩ろうとでも

企んだのだろう。その手の呪は、ある程度魔力を持つ者ならば感知出来る。

 それを放置したまま下る事は、大切な仲間を無用な危険に晒す事にもなろう。」

「…そんなの。オレ‥知らなかった。一体いつから…マスタードラゴンは知ってるの!?

確か‥さっき、世界のすべてを知る‥とかって言ってたよね?」

「…そなたが解らぬのなら、敢えて知る事もあるまい。忌まわしき記憶故、自ら封じたの

 であろう?」

「自ら‥封じた…?」

「マスタードラゴン!!」

抗議めいた声を発したクリフトを、神が制するよう目線を送る。不承不承、彼は押し黙っ

た。

「そなたももう、気が付いて居るだろう。自身の記憶に欠損がある事を。」

静かに訊ねられて、しばらく考え込んだ後、ソロは小さく頷いた。

「‥無理に思い出す事はない。だが‥その呪は別だ。払う必要があろう。」

「…みんなを危険に晒しちゃうから?」

「そうだ。」

「…よく解らないけど。その目印を消さないといけないんだね。」

「そうだ。」

「でも‥どうやって?」

「その為にここへ呼んだのだ。」

「‥マスタードラゴンが、やってくれるの?」

「うむ。」

「ふうん‥。解った。」

感情の籠もらぬ声で、ソロはそれを了承した。