「節分‥?」

「そう、それで豆まきしようってなったんだけど。

 肝心の鬼役がね、決まらなくて‥」

何やら賑やかに集まってた一同に理由を聞くと、そんな答えが返ってきた。

節分の話は昨日夕食の時に話題になってたので理解はしているソロだ。

「鬼かあ‥」

ぽつんと呟くソロをトルネコが手招きして呼びよせる。

「ものすごく張り切ってる姿見たら、ちょっと躊躇してね‥」

やって来たソロにコソっと耳打ちしたトルネコが、その張り切ってる面々へと

目線を向ける。

‥成程。かなりやる気満々だ。

「‥お祭り、なんだよね?」

遊び気分とは違う気迫を漂わせるアリーナ、マーニャに、ソロもコソコソ返した。

「その筈なんですがねえ‥」

クリフトも溜息混じりに答えた。

豆をぶつける‥というより、豆で殺ってやる‥といった方向で何故か盛り上がって

るらしい彼女達に

慄く男性陣。

確かにこれは「鬼」にはなりたくない。うん。

「話し合いで決まらないならさ、ソロ。あんたが選んでよ。」

どうしたものかと一緒に頭抱えていると、業を煮やしたらしいマーニャがそう決断

を迫った。

「え‥オレ?」

「そう。あ‥あんたは選択に入れなくていいわ。女子枠って事で。」

「そ‥そう?」

いつもなら「女子」カテゴリーにされるのを嫌うソロだが。今日はそこはスルー

した。自分も鬼は

やりたくない。

とはいえ。メンバーの誰か選べと言われても‥

ソロは集う男性陣と少し離れた位置に佇む魔王を眺めた。

「ソロも参加するんだから、ちゃんと豆ぶつけていい人選んでね?」

マーニャがそう付け足した。

「え‥オレも参加するの?」

「そりゃあそうよ。全員参加。じゃないと楽しくないじゃない。」

マーニャのセリフにアリーナ・ミネアが大きく頷く。

全員参加。んでもって、豆をぶつけやすい人‥

「決まった?」

「うん。」

マーニャの問いかけにコクンと頷いて、ソロが徐に手を上げる。

びしっと伸ばされた人差し指の示した先は‥

「ピサロ。鬼役決定ね。」

反論しようと口を開きかけた魔王に、ソロが更に続ける。

「オレも豆まきやってみたかったんだ。がんばってね、ピサロv」

にっこりと微笑まれて。ピサロは断るタイミングを失った。



『愛が薄い‥』

以前踊り子が呟いたセリフを脳内にフラッシュバックさせる魔王だった―――



豆まき。それは時にバイオレンスなイベントと化す恐ろしい行事だと。


後の世に語られたかどうかは定かじゃないw



2014/2/3
      
 
節分に合わせてピクシブにUPした短編です。
続きも書いたので。こちらにもUPしました。