「熱…?」

「ええ。今日は少し魔力の消費が激しかったですからね。原因はそれかと思いますが‥」

夕食後のミーティングの最中から、少しぼんやりしているよう見えたソロは。部屋へ戻る

なり真っすぐベッドへ向かった。

くたっと横になった彼の様子をクリフトがピサロへ説明する。

「‥よくあるのか?」

「そう常ではありませんけど‥。でも…今夜は少し高いみたいですね。」

額に手を当てながら、クリフトが心配そうにこぼした。

「…大丈夫。寝れば治るから。」

にこっと力無くソロが微笑む。

「薬草、先日切らせたばかりでして‥。昼間なら‥どうにかなったんですけどね…」

「解熱薬なら持って居るぞ。」

荷物を引っ繰り返していたピサロが、小袋を手にやって来た。

「でも…ソロは‥」

体質なのか、使い慣れてない薬を飲ませる時は慎重に扱わなければ‥と進言する。

「ああ‥知ってる。効きが強く現れてしまうのだろう‥?」

「…ピサロ。よく変な薬飲ませてきたもん。」

くすり‥とソロが口元を和らげた。

「まともなモノも調合したぞ。」

「‥まあね。」

「それで。ソロに与えても問題ない薬なんですか?」

「ああ。問題なかろう。子供用だしな。」

フッ‥と口角を上げると、ピサロが包みの中から指の第一関節程した大きさの固形物を

取り出した。

「‥それって。」

形状を見たクリフトが、察した様子で口籠もる。

「なんなの…?」

「座薬だ。」

「‥? それって‥何?」

きょん‥と首を傾げるソロに、クリフトが耳打ちするよう説明した。

途端。ソロの顔色が変わる。

「い‥いいっ! オレ、熱全然大したコトないし。それ、必要ないから!」

真っ赤に頬を染め、ブンブンと力いっぱい拒否するソロ。

「でも‥効果はありますよ。」

「一晩寝れば治るもん。だから‥いらないっ。」

そう言って。ソロはさっさと布団の中に潜り込んでしまった。

「…だそうですよ?」

「‥まあ。今の様子なら‥無理に使わずともよかろう、確かに。」

心配いらないと判断したピサロは、小袋をサイドテーブルに置き、浴室へ向かった。

「…ピサロはお風呂?」

足音が扉の向こうへ行くと、ソロがひょっこり布団から顔を出した。

「ええ。ソロは、今夜は止めておいた方がいいですね。」

こくん‥とソロが頷く。少し潤んだ瞳は、また熱が上がった様子を示していた。

「ソロ‥本当に、大丈夫ですか? また少し上がってるみたいですよ?」

こつんと額を合わせ、クリフトが再度確認する。

「…だって。恥ずかしいもん‥」

「…そうなんですか? ‥では。私も席を外しますから。ご自分で入れてみます?」

気恥ずかしげに羞恥うソロに苦笑しつつ、彼が提案した。

「え‥自分で? …出来るかなあ?」

「大丈夫、簡単ですよ。」

「…じゃあ。クリフト、ちゃんと向こう見ててよ?」

逡巡した後、ソロはのっそり躰を起こし、クリフトを促した。

「はい、解りました。」

言われるまま背中を向けるクリフト。それを確認すると、ソロはサイドテーブルに置かれ

た小袋を手に取った。

小袋の中には先程見た、鉄砲の弾のような薬が幾つか納められて居た。

「…どれも同じなのかな?」

見た目は全部同じ形状だが。色が幾つかあった。

ソロは先刻見たのと同じモノを見つけると、それを選んで他のは元へ戻した。

躊躇いつつもどうにかそれを指で押し込んで。

ちょっとした違和感はあるものの、どうにか内部へ納めると、下ろしたズボンを上げて布

団へ再び潜り込んだ。

「‥もういいよ。」

そこまで済んで、やっと安堵の息を漏らしたソロがクリフトへ声をかける。

「どうです‥?」

「うん…よくわかんない。‥ちょっと変な感じするかなあ…」

「そうですか。まあ‥とりあえず。今夜はゆっくり休んで下さい。」

「うん。」



しばらくして。

ピサロと入れ違いにクリフトが浴室へ向かい、部屋にはソロとピサロが残された。

自分の寝台へ腰を下ろしたピサロが、隣の寝台で眠るソロを覗う。

「ふふ‥くすくす‥‥‥」

すっかり眠ってしまったと思っていたソロだったが。

もぞもぞ動いたかと思うと、クスクス笑い出した。

怪訝そうに眉根を寄せ、立ち上がったピサロが布団を剥ぐ。

「‥ソロ?」

顔を出すようすると、目が合った途端スルリと手が伸ばされた。

緩く首に絡んだ腕に引き寄せられて。ピサロが躰を屈める。

「あのねえ‥‥ソロね…うふふ‥‥‥」

どこか甘ったるい口調で、機嫌良さそうにソロが抱きついた。

「ソロのないしょ…しってる‥?」

くすす‥と笑いながら、ソロが目元を染め彼を見つめた。

「ソロ…。お前‥酔ってるのか…?」

「ぶっぶ〜。はずれ。ざんねんでした。ソロ、お酒なんかのんでないも〜ん。」

「‥‥‥‥」

確かに。ソロからはアルコールの匂いを感じない。だが…

「…他に口に入れたものは?」

ソロは左右に首を振って答えた。それからスルリと腕を解き、徐にピサロから躰を離す。

「‥ピサロ。ソロのコトきらいなんだ。」

ぽつっと機嫌悪そうに呟くと、今度はほろりと涙を落とした。

「‥何故そうなる?」

その変化について行けず、ピサロが渋面を浮かべる。

「だって。かおこわいもん。おこってるんだもん。」

ぽろぽろと涙をこぼし、さめざめと泣くソロ。困惑顔でおろおろしてると、ぱたんと浴室

の戸が開いた。

いつもは邪魔に思える神官の存在が、不覚にも一瞬有り難く感じる。

「…どうかしたんですか?」



「‥ああ。薬‥合わなかったんですかね?」

かい摘まんで説明すると、神官があっさりと返した。

「薬だと…?」

「ええ。先程の座薬。結局ソロが自分で入れたんですよ。」

「何!?」

慌ててピサロが小袋を確認する。…確かに。1粒減っていた。だが…

「‥どうやら。間違って別の薬を使ったな。」

「そんなにいろいろ入ってたんですか?」

苦々しく魔王が頷く。はあ‥とクリフトも大仰な吐息を落とした。

「混乱が治まらぬ時に用いる薬がない。あれは‥混乱中に用いるモノで、そうでない時に

使うと…こうなる。」

えぐえぐと泣くソロを指し、嘆息した。

「‥つまり。これは混乱してるんですね。」

クリフトは溜め息交じりに言うと、ソロのベッドへ腰を下ろした。

魔王もどうにか宥めようと手を出してはいるものの、嫌々するよう振り払って駄々を捏ね

てしまう。結局クリフトがソロをそっと抱き寄せた。

「あんまり泣かないで下さい? 熱が上がりますから‥ね?」

「…って。‥だって…ピサロ、ソロきらいなの。」

う〜と瞳いっぱいに涙を溜め、ソロがぽつぽつ話す。

「嫌い‥と言われたんですか?」

こくん‥とソロが頷いた。

「言っとらん。」

顰めっ面で憤慨するピサロに、再び眉を下げたソロが泣き出す。

「ピサロさん。相手は子供なんですから。」

「ソロ、こどもじゃないよ。」

「そうなんですか?」

「うん。だってねー。ソロ、えっちいっぱいしたもん。」

にっぱりと幼い口調で告げてくる姿に、見守る2人が仰け反った。

「‥そうでしたね。」

「ソロねーしたい‥な。」

口元に手を当てて。ぽつんと思いついたようこぼす。

ほんのり染まった頬は、発熱のせいだけでなくなっていた。

「ですが‥熱が‥‥‥」

「へーき。だから‥しよ?」

上目遣いに強求られて。クリフトが困惑したよう魔王へ目を移した。

それにつられたソロが同じようにピサロを窺う。

「ピサロはね…だめなんだ。」

「何!?」

「ほら…おこってるもん。ソロ‥きらいだから。」

「嫌ってなど居らんと言うのに。」

「きらいなんだもん。ふ‥ぇえ‥‥ん。」

「ソロ。彼はね、単に愛想がないだけなんですよ?」

だから怒ってないのだと、クリフトが優しく諭してやる。

愛想ない‥と評された魔王は憮然としたが。彼の言葉を確認するようソロが顔を上げると、

懸命に表情を和らげた。

「…きらいじゃないの?」

「ああ。」

慎重に頷いてみせると、ソロは考えるよう首を傾げた。

「ほんと…?」

「ああ‥本当だ。」

そっと伸ばされた手がソロの頬を包む。

それを心地よさそうに受けた後、彼はクリフトへ目線を移し確認した。

「ほんと…?」

ふわりと微笑んで、クリフトが頷く。やっと納得いったのか、彼もこくんと頷いた。

「じゃあね…えっちする?」

もう一度ピサロへ向き直り、ソロが口を開く。

「構わんが…躰は良いのか?」

「へーきだもん。ね‥しよ?」

宙に浮いた形となっていたピサロの手をソロが両手で包む。徐に唇を寄せたと思うと、

彼は子猫のように指先を舐め出した。

「…ピサロさん。ソロ用だからって、媚薬も一緒に混ぜたんですか?」

婀娜っぽく映るソロを眺めながらクリフトが嘆息する。

「‥混ぜた覚えはないがな。」

「…まあとりあえず。責任取って下さいね。」

そう言ってクリフトがソロから離れ、立ち上がった。

「クリフト‥?」

「今夜は彼にゆっくり愛して貰って下さい、ソロ。」

額に掛かる翠の髪を掻き上げて、クリフトが額に唇を寄せた。

「クリフト…ソロ、きらい?」

「大好きですよ。」

ふわりと微笑むと、憂い顔が和らいだ。

「ソロもすき。」

きゅっと腕を回しクリフトを引き寄せ、ソロが口接けた。

「じゃ‥こんどね。」

「ええ。無理はしないで下さいね?」

こくん‥と頷いて。腕を解くとバイバイと手を振り見送る。

「‥ソロ。私の寝台に来るか?」

クリフトが奥の寝台へ向かうのを見届けると、ピサロがソロに声を掛けた。

「ん…いいよ。」

抱き上げてくる腕に導かれるまま寄り添って、彼の首に腕を絡める。

「あのねえ…ソロ、すき‥?」

こっそりと。まるで内緒話でもするように、ソロが訊ねた。

怖いと散々評された貌が柔らかく微笑む。

「ああ‥好きだぞ。」

ソロは嬉しそうに顔を綻ばせると、照れた様子で彼の肩口に顔を埋めた。

ほんの数歩で到着した隣の寝台。

そこへソロの躰をそっと横たえて、ピサロが彼に覆い被さる。

「‥ソロはどうなんだ?」

密やかに訊ねられて。ソロがきょんと蒼の瞳を見開いた。

「…私が好きか?」

更に潜めた声でピサロが囁く。ソロはほんの少し眉を寄せ考えた。

「あのね‥‥‥」

両手を口元に持っていったソロが、ピサロの耳にぽそりと語りかける。

「あのね‥‥ないしょなの。」

うふふ‥笑って、人差し指を口元で立てた。

「‥‥‥‥」

神官相手なら。バーゲンセールのように「好き」の応酬するのに。

メダパニ状態でも言ってはくれないその一言。

ガッカリ肩を落とす魔王さまだったが。

しっかりその気になってるソロに強求られれば弱い訳で。

躰に負担掛けないよう気遣いながら、きっちり召し上がりました。



翌日。

「ん‥あれ?」

ぽやんと目を覚ましたソロは、ピサロのベッドで半裸で眠ってる自分に目を丸くする。

昨晩は熱が思ったよりキツかったので、薬貰って自分のベッドで休んだはずなのに。

躰中に散らされた花片が情事の名残として色づいている。

「ピ〜サ〜ロ〜。お前、オレ具合悪かったの知ってて、連れ込んだな!?」

ソロは頬に朱を昇らせ、キッと眠たげな魔王を睨みつけた。

「やっぱりお前、オレの躰だけが目当てなんだ‥!」

真っ赤な目が細められると、ほろっと涙が伝い落ちる。

「誤解だ。昨晩はお前が‥‥っ。こら‥やめ‥っ‥‥‥」

枕をぐいっと引き抜いたソロが、それでバシバシ魔王を叩き始めた。



「‥ソロ。あまり宿のモノを乱暴に扱っては行けませんよ。」

適当な頃合いを見計らって、その光景を見守っていたクリフトが間に入った。

「だって…クリフト。ピサロが酷いんだ。」

「…まあ確かに。ピサロさんの落ち度を責めるのは、問題ありませんけど。

 昨晩の件。ソロは覚えてないんですね? 薬の副作用の事も‥」

「副作用…?」

ソロが苦い顔を浮かべ、ピサロをじと目で睨めつけた。

「…昨晩貴様が用いた薬は解熱薬ではなかったのだ。」

「…で?」

「‥混乱を治す薬だった。…あれは、状態異常を回復させるものであって…

 そのまま用いれば、逆に‥‥‥」

「‥混乱、してたの?」

「‥まあ。有り体に述べれば、そう言う事です。」

不安顔で2人を覗うソロに、にっこりとクリフトが答えた。

「オレ…変だった‥?」

「大丈夫。可愛かったですよ。酔ってる時と変わらないですから。」

「本当…?」

「ええ。それより体調はいかがですか?」

「あ‥うん。平気。なんともないよ。」

「良かったですね。」

「うん。…でも。もう座薬は絶対使わないもん!」

恥ずかしい思いして使った揚げ句、記憶のない混乱状態になった自分があまりに情けなく

思ったソロが、当分ピサロにお預け食らわせたとか、しないとか…



ちょっぴり貧乏くじな魔王さまでしたとさ。



おしまい





2006/4/27





あとがき
某所で話題に上がった(笑)座薬ネタ。…結構普通な座薬になってしまいました。(?)
あれはPサマが自分で作ったものです。
元々携帯しやすい潤滑剤を作ってて、ついでに…とオプション付けたらしい。
(もちろん、ソロ用にv)
ウチのPサマは調合とか自分でしちゃうヒトなので。
これからもいろいろ飲まされてしまうかも知れませんね、ソロは(^^




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