Labyrinth〜Level.1〜

その1


ぱたん‥。

 クリフトは読んでいた本を閉じると、部屋の戸に目線を向けた。

(…今夜も、来ないのかな‥‥‥?)



キングレオからサントハイムへ向かう道中。

 途中立ち寄った海辺の村を発ってから3日が過ぎていた。

 順調に進めば、そろそろサントハイムへ着いてたはずだが、島の外海に出た途端やたら

と増えた魔物との戦闘で、予定は大幅に遅れていた。



そろそろ身体を休めようかと、本を閉じたクリフト。

思わず向けてしまった目線を否定するよう、頭を振った。       
頭→かぶり

海辺の村に寄る前まで、毎晩のように部屋を訪れていた勇者は、村を出てから一度も訪

ねて来ずにいた。

トントン…。

 ふいにノックが届いた。

「…?(誰だろう‥。こんな時間に?)」

 鷹耶なら、ノックと同時に部屋を開けて来る事を知るクリフトが首を傾げながらも戸口

に向かった。

「はい‥‥あ。アリーナ様?!」

 扉の向こうに立っていたのは、アリーナだった。

「ごめんね、遅くに‥。部屋の前を通ったら、まだ起きてるみたいだったから…」

「どうかなさったのですか?」

「うん…。さっき‥デッキでね、転びかけた時に変に手を着いちゃって…」

言いながら、アリーナが右手を左手で庇いながら、そっと上げた。

「捻ってしまったんですね。痛みますか‥?」

怪我の様子を確認するように、クリフトがそっと手を触れた。

「ッ痛‥。」

「あ‥。すみません、大丈夫ですか? すぐにホイミしますね。」

「…ありがとう。‥本当はね、朝まで我慢するつもりだったんだけど。クリフトの部屋

  まだ明るかったから‥頼っちゃった。…ごめんね。」

「何言ってるんですか? 怪我は早目に治してしまわないと。

  いつ戦闘になるか解らないんですから。いつだって頼って下さっていいんですよ?

  それが私の役割でもあるんですから!」

「…うん。ありがとう。」

ホイミの治療を終えたクリフトにアリーナが微笑んだ。

「私ね‥クリフトのホイミが一番好きだな。なんだか暖かいの。」

「そ‥そんな…。」

照れるようにクリフトが頬を染めた。

「本当よ。ありがとう…おやすみなさい。」

「おやすみなさい‥アリーナ様。」

 笑顔で手を振ると、アリーナは自室へと戻って行った。

 残されたクリフトは、その後ろ姿をしばらく見送っていた。

「しっかり頼られてるんだな、クリフト。」

「鷹耶さん。」

背後から声をかけられて、一瞬ビクッとなったクリフトが振り返った。

「いいよな、お前はさ。彼女が訪ねてくれるもんな…」

「か‥彼女‥って。アリーナ様はそんなんじゃ…!」

「俺の部屋を訪ねてくれる人間なんて‥居ないからな。」

露骨に寂しそうに鷹耶が吐息をついた。     
吐息→ためいき

「そ‥そんなことないですよ、鷹耶さん。」

「んじゃ‥お前今から来るか?」

「え‥? 私‥ですか? 今から…?」

「…ほら。やっぱり嫌なんだろ? いいよ。言ってみただけだからさ。」

途惑う彼に、大袈裟な落胆を見せながら鷹耶が言った。

「…承知りました。じゃ‥ちょっと待ってて下さい。」     
承知り→わかり

 クリフトは部屋の明かりを消しに一旦戻ると、踵を返した。

暗くなった部屋を戸口に向かって歩きながら、ふと首を捻る。

(…何でこうなるんだ…?)

その答えが出る前に、鷹耶の待つ廊下へと着いてしまうクリフト。

「待ってたぜ。んじゃ‥行こうか。」

ご機嫌な様子の鷹耶が、やって来たクリフトの肩に腕を回した。



 すぐ隣の鷹耶の部屋には、彼が途惑う間もなく着いてしまう。

開かれた扉の前で、クリフトは俄に緊張を走らせた。

「…ん? どうした? まさか‥今更帰る‥はないよな?」

「あ‥いえ。」

促されるように彼の部屋に足を踏み入れるクリフト。

「どうしたんだ? ぽかんとして。」

 入口で突っ立ったままの彼を訝しむように鷹耶が訊ねた。

「…初めてなんですね。鷹耶さんの部屋に入るの。」

「そうだぜ? 中に他人を通したの初めてだもん。」          
他人→ひと

言いながら。鷹耶はベッドに腰を下ろした。

各自に与えられた船の個室はどこも同じ造りなのだが、鷹耶の部屋には剣が置いてある

以外、特に荷物らしい物が見当たらなかった。

 元々各自の荷物など、それ程積んでないのだが、それでもクリフトは本を数冊ベッドの

側に置いてあるし、ちょっとした怪我や病気に対応出来るように、薬の類いを棚にしまっ

てあったりする。ミネアの部屋は、そのまま商売出来るのでは? …と言いたくなるよう

な神秘的な匂いを漂わせていたし、ブライの部屋は魔法関連の書物やアイテムが幅を利か

せつつあった。

「なんにもない部屋だろ?」

「はあ…。本当に…あ。…すみません。」

「別に謝る所じゃねーだろ? なあ。こっち来いよ。」

「‥‥‥」

クリフトは一瞬考えたが、促されるまま彼の隣に腰掛けた。

「…んっ。た‥鷹耶‥さん…?」

 彼が隣に座ると、待っていたかのように引き寄せ口づけて来た。

3日間の空白を埋めるようなディープな口づけ。

「ふ…はぁ。…ふ。…んっ‥‥‥っは‥んん‥。」

口腔を執拗に貪られたクリフトは、唇が離れた後も、退く事を忘れ、弾んだ息を整える

事に専念する。

「…鷹耶さん。いきなり何をするんです‥?」

「ん−。ちっとは自制しようかと思ってたんだけど。無理は身体に毒だったみたいでさ。

今夜はとことん付き合ってくれよ。」

クリフトの肩に顎を預け、耳元で甘ったるく囁いた。

「な‥何をです?! …僕‥やっぱりこのまま‥‥」

 立ち上がろうとしたクリフトを鷹耶が制した。

「駄目だぜ。今夜は俺の部屋に泊まって行けよ。」

調子を強めた命令長な声が静かに響く。

「だ‥だけど…!」

「大丈夫。これまで以上の事はしねーからさ。だから…な?」

鷹耶は啄むようなキスを贈ると、甘えるように問いかけた。

「…鷹耶さん。」

クリフトが困惑を隠さず、溜め息を零す。

「…この間みたいなのも‥なしですよ?」

念を押すように言ったクリフトが、彼を見つめた。

「ええっ!? それくらい、いいじゃん。減るもんじゃあるまいし‥。」

やっぱり…といった表情で、鷹耶の魂胆を察したクリフトが青ざめた。

「…十分減りますよ。気分が滅入ります‥☆」

「ふうん‥言うじゃない。イイ思いだけで終わらそうと思ってたけど‥意地悪しちゃお

  うかな?」

「え‥? ん…。あ‥‥ち‥ちょっと、鷹‥耶…さん…?」

獲物を見つけた猛禽類のようにキラリと光った瞳に、クリフトがしまったと思った時に

は手遅れだった。

鷹耶は素早く彼の唇を奪うと、そのまま自分の重みを乗せ、組み敷いた。

同時に上着の下に滑り込ませた手が、ふくよかとは言い難い胸部を弄る。

「全身で感じさせてやるよ。…滅入る間もないくらいな。」

低く言う鷹耶の視線に、ゾクっと背筋を冷たいモノが走った。

「鷹‥やっ‥。…駄目‥‥‥っ!?」

なんとか抗おうと必死なクリフトが、びくん‥と身体を震わせた。

「…ココ、感じるんだ‥?」

彼の反応を逃さずに、瞳だけ笑んでみせた鷹耶が執拗に周辺を弄る。

「や…ちが‥っ…。ん‥‥‥。」

 それまでただの飾りとしか思えなかった小さな突起から、下腹部に響くような甘い疼き

が走る。信じられない状況に、途惑いながらも、漏れ出そうになる声を抑えるだけで手一

杯のクリフト。

 そんな彼の様子に満足気な鷹耶は、彼の上着をたくしあげると、ほんの少し固さを増し

たピンクのそれに口づけた。

「…! た‥鷹耶さん…? やめ…っん‥‥」

それを口に含んだ鷹耶は、舌で転がすように弄びながら、もう片方の突起も指を這わせ

た。人差し指と親指で、確かめるように触れてくる。

 左右交互にその感触を味わった後、いつの間にか涙に濡れていたクリフトの目元にキス

を落とすと、柔らかな声音で鷹耶が囁いた。

「‥どうしたの? …怖い‥?」

クリフトは瞳を閉じたまま、小さく頷いてみせた。

「なにが怖い…?」

「…って。‥だって‥こんなの…変‥‥」

目を覆うように腕を顔の上に伸ばしたクリフトが、しゃくり上げながら答えた。

「…感じるのが?」

かあっと頬を赤らめながら、否定するように頭を振るクリフト。

「ちっとも変じゃねーよ。感度がいいだけだろ?」

「なっ?! 違…っ。」

さらりと問題発言する鷹耶を睨みつけたクリフトだが、瞳が合った途端唇を塞がれてしまっ

た。先程まで散々弄られた突起を指がなぞり、ガードが緩んだ隙にちゃっかり舌を潜り込

ませた鷹耶が口腔を蹂躙する。

「ん‥‥んっ…。ふ‥ぁ…ん‥‥‥」

くぐもった声を漏らしながら、なんとか彼から逃れようとするが、彼の指先が辿る軌跡に

どうしても神経がいってしまい、結局思うまま翻弄されてしまう。

「…こっちも苦しそうだな。」

下し切れず零れた唾液をすくうように口の端を舐め上げると、耳元に熱い声音が響いた。

「あ…やっ…!」

下腹部に伸ばされた腕は、もたげかけた部分をサワッと撫で上げたと思うと、下着ごと

一気にその覆いが引きずり下ろされてしまった。

「‥いい眺めだな。」

「鷹耶‥さん。…もう。もう止めましょう‥よ。」

懇願するように彼を見るクリフト。

「今止めると、ツライのはクリフトだろ?」

言いながら、鷹耶がぎゅっとソレを握り込んだ。

「あ‥!? ふ‥くっ…。鷹耶さん…?」

ほとんど泣きそうな声で、クリフトは自分をベッドに抑え込んだままの鷹耶を窺い見た。

「大丈夫だって。ちゃんと悦くしてやるからさ。」

「違…ふ‥ぅん‥っ。や…駄目‥‥‥」

巧みに追い上げられ腰が悸える。急速に熱を帯びていくソコからどうにか逃れようと、

今にも放棄してしまいそうな理性を必死で繋ぐクリフト。

「こんなに素直なのにな、お前は。」

「な‥に、言‥って…?」

握り込んでるモノに話しかける鷹耶を訝むように問いかけた。

「んあ‥。…鷹耶‥さん‥?」

ふいにソレが解放された。昇り詰めた熱を帯びたまま‥。

「…泣く程嫌だったら、滅入るだけだろ?」

横に伝い落ちる涙を拭ってやりながら、吐息混じりで鷹耶が話しかけた。

「…それとも。泣く程イイのかな‥?」

意地悪そうな笑みを浮かべ、畳み掛けるように尋ねる鷹耶。

「…鷹耶さん‥」

困惑顔を浮かべるクリフト。そんなの。クリフトにだって判らないのだ。

「どうする? 続ける? 止める‥?」

口の端を上げ、目元に朱を走らせたクリフトを窺い見る。

「あ‥。やっ…!」

鷹耶が、ツツ〜と張り詰めたままのソレに人差し指を走らせた。ビクンと大きく退け反る

クリフト。

「嫌…? だったら止めようか。」

「あ…。‥‥‥。‥止め‥‥ない‥で…。」

消え入りそうな声で、観念したようにクリフトが決断した。

「そう‥? んじゃ‥遠慮なく…。」

嬉しそうに言いながら、ほおってあったソレを早速と握り込んだ。

「ん‥んっ…。あ‥はぁ…ふ‥‥んんっ‥。」

もう限界に近かったソレは、彼の導くままにあっと言う間に弾けてしまった。

「はあ‥はあ‥‥‥」

大きく肩で息をしながら、解放感に身体の緊張が一気に解される。

そんな余韻に浸る間もなく、ふいに足を大きく開かされ、あらぬ場所へと彼の手が伸び

てきた。

「鷹耶さん‥? やっ‥なに‥を…!?」

「言ったろう‥? 全身で感じさせてやるってさ。」

含みのある顔で笑んでみせる鷹耶。途惑うクリフトに構わず、彼が放ったモノを塗り込む

かのように、きつく閉じられた蕾を解して行く。

「た‥鷹耶さん…? そこは‥いや‥だ…!」

なんとか逃れようと思うのだが、がっちりと抑え込まれた身体は動きようがなく、未知の

恐怖が顔をこわばらせてしまう。

「‥大丈夫。痛いコトまではしないからさ…。」

耳朶を甘咬みしながら、優しい声音を響かせた。

「だから‥もうちょっと、力抜いて‥ね?」

「…っ! あ‥‥やだ…ん‥‥‥」

「…ふふ。さっきより敏感になってるみたいだな。…可愛いよ‥。」

睦言めいて言いながら、耳元から首筋にキスを落としていく鷹耶に、朱に染まった頬を更

に紅潮させ、甘い声を漏らすクリフト。そんな彼を嬉しそうに見ながら、片手をピンクの

突起へ滑らせた。

「あ‥ん。ん…ふ…やだ‥‥」

甘い疼きに小さく退けぞった瞬間、蕾に差し入れられた指。そのなんとも言い難い感触に、

クリフトが抗うように首を振った。

「…痛いか?」

「…痛‥くはない‥けど。でも…気持ち悪い…。」

「まあ‥。そうかもな。」

小さく苦笑した後、鷹耶はクリフトに口づけた。

「ん‥ん…。ふ‥ぁ‥‥んんっ…。」

油断していたクリフトは、あっさりと舌を差し込まれ、口腔を貪られてしまう。

鷹耶はその感触を思う様味わいながら、探るように慎重に、蕾の奥へと指を沈ませてい

く。根元までしっかり沈めた所で、鷹耶は唇を解放した。

「な‥判るか? 俺の指飲み込んじまったぜ?」

「あ…! や‥嘘…。…あ。やだ。動かさないで…。」

ショックを受けるクリフトに構わず、鷹耶は内部を刺激するよう指を蠢かせた。

「や…鷹耶さ…やめ‥。」

なんとも言えない異物感に、苦しそうに眉を寄せる。だが鷹耶は執拗に索って来て…








           



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