「ソロ‥食事は? もう済まされましたか?」

風呂から上がり着替え終えた彼に、待って居たクリフトが訊ねた。

ソロが小さく首を振って答える。

「…じゃ、部屋へ戻る前に食堂へ寄りましょうか。」

そう言うと、促すようそっと彼の肩を押した。



メニューすら見ようとしない彼に代わって、クリフトが適当に料理を注文する。

店員が立ち去ると、ソロと向かい合わせにテーブルについたクリフトが、ひっそり嘆息し

た。今日はずっと、彼はクリフトと顔を合わせないでいる。

言いたい事も訊ねたい事も沢山あったが、クリフトはそれらを辛抱強く飲み込んだ。

やがて運ばれてきた料理を、ソロはもくもくと食べた。

食べる前、コーヒーだけしか来ていないクリフトに「クリフトは?」と訊ねてきたが、

既に食事を済ませた事を聞くと「そう‥」とだけ答え、ソロは無言のまま食事を続けた。

ここまで無気力に食事をとるソロを見るのは初めてかも知れない。そうクリフトは思った。

食事を終えると、カタン‥とソロが椅子から立ち上がろうとした。

それをクリフトが仕草で制する。ソロは素直にもう一度席に着いた。

「デザートも頼んであるんですよ。ソロ‥今日は朝もとらずに出たでしょう?」

「‥‥‥‥」

「ほら‥来ましたよ。」

空になった器の代わりに、デコレーションされたプリンとフルーツジュースが並べられた。

ソロが以前とっても喜んでいたアラモードとミックスジュースだ。

彼はスプーンを手に取ると、機械的な動作で再び口へ運んで行った。

常ならば、ころころ変わる表情が、先程からちっとも変化を見せない。    
吐息→ためいき

クリフトは何から切り出したらいいものか‥と、そんな彼を眺めながら吐息ついていた。



静かな食事を終え、今夜の部屋へ着くと、ソロが早速自分の荷を確認し始めた。

「‥ありがとう、運んでくれて。」

一度解いた荷を再びまとめ直すと、ソロが小さく声をかけた。

「オレ…今夜から一人で休むから。‥いままで、いろいろありがとうクリフト。」

「な‥。何を言い出すんですか、いきなり!?」

クリフトが彼の進路に立ちはだかり、荷物を取り上げ、真剣な瞳を向ける。

「独りになりたい‥そう言ってるんだ。

 …ちゃんと勇者の役目は果たす。だから‥構わないだろう?」

「そういう事を言ってるんじゃありません! ソロ‥!」

視線を合わさない彼に焦れたクリフトが、苛立った様子で彼の両肩を掴んだ。

「‥何故急に独りになりたいだなどと…。理由もないまま‥納得行きません。」

声のトーンを落とし、クリフトが再度ソロへ話しかける。

「…もっと早く、そうするべきだったんだ。」

俯いたまま自身に叱りつけるよう、ソロが言った。

「…それでは解りません。」

「‥オレが付き合ってた魔族…いたろ。

 …それって‥さ、…デスピサロ‥だったんだよ…」

ソロはきゅっと拳を握り締め、とうとう彼の正体を明かした。

「…軽蔑していいよ。オレは‥自分の村を滅ぼした仇に‥魔王に‥惚れたんだ。」

瞳を赤く腫らしたソロが、やっとクリフトへ目線を止めた。

涙はなかったが、目元が染まり、今にも堰を切ってしまいそうに揺らいでいる。

「最低だよね。こんなオレなんか‥もう‥‥!」

自嘲気味に笑んだ後、進路を塞ぐクリフトを迂回し、部屋を出て行こうと足を踏み出す。

そんな彼の腕をクリフトがぐっと掴んだ。

「…離してよ。もうオレに‥構わなくて、いいから…」

「‥それで納得出来たと思いますか?!」

低く張り詰めた声で、クリフトがソロを厳しく見据えた。

「…ちゃんと‥勇者の役目は果たす‥」

視線を逸らし、ソロがどうにか言葉を紡ぐ。

クリフトはクッ‥と喉の奥で冷嘲うと、グイっと乱暴な仕草でソロの腕を引いた。

どっさりベッドへ引き倒し、素早く圧しかかって動きを封じる。     
冷嘲う→わらう

「あんまり‥見括らないで下さいね?」             
見括らない→みくびらない

低い声音は怒気を孕み、いつにない凄みがあった。

「…クリフト。」

流れるような動作であっさり押し倒されてしまった事にも驚いたが。それ以上に、眼前に

迫る彼の迫力に気圧されて、ソロはごくりと息を飲んだ。

「私が関心あるのは‥勇者でなく、ソロなんですよ?

 今あなたを行かせてしまったら、あなたを失うと‥解らない私だと思いますか!?」

悔しそうに顔を歪ませ、切なげにクリフトが訴える。

「‥あなたはすぐに私の気持ちを忘れてしまうみたいですね。」

「…クリフトの‥気持ち‥」

微苦笑したクリフトが額を寄せると、ソロが途惑うようこぼした。

「言葉や態度じゃ足りないのなら‥いっそ躯で示した方が伝わりますか?」

そう言うと、クリフトはソロの上着を剥いでしまった。

「クリフト…ん‥っ、ち‥ちょ‥‥クリフトっ‥?」

露になった肌を滑る指先が意図を持って這い、淡く染まった果実を捉えた。

ビクッ‥と悸えた躯は、間を置かず与えられる刺激に過敏に反応を示し出す。

的確に弱い所を責め立てられて、ソロはすっかり防戦一方になってしまった。

「あっ‥。ん‥‥‥」

ねっとりとした舌で果実を転がし、時にきつく吸い上げる。もう片方は指の腹や爪先で

散々捏ね回されて、じんじんとした熱がこもってゆく。

ソロは急速に追い上げられる熱に翻弄されつつあった。

「‥ソロの本音も、こちらで訊ねた方が早いみたいですね。」

「え‥?! あ…んっ‥は‥‥‥」

色よく反応を返すソロにクスっと微笑むクリフトだったが、ソロは躯を巡る熱流を追うの

に精一杯。つう‥と下腹へ降りる指先にそって下って来る唇に、自然と躯を撓らせた。

既にキツそうになっていたズボンを下穿きごと一気に剥ぎ取る。

まだ明るい陽の差し込む室内で、一糸纏わぬ姿とされてしまったソロが、気恥ずかしげに

頬を染めた。クリフトの着衣はまだほとんど乱れてない。なのに‥自分ばかりが情欲に潤

んだ肢体を晒している。

「‥ク‥ああっ‥。や‥駄‥目だ…んんっ‥」

それに抗議しようと口を開いたソロだったが、ほぼ同時に下肢を押し開いたクリフトが、

彼の中心を口に含んでしまった。強烈な刺激が稲妻のように走り抜ける。

柔らかな温かい粘膜に覆われて、ソロは甘く喘ぐしか出来なくなった。

「あっ‥あ‥んっ‥‥‥ああっ‥」

根元をしっかり指の輪で押さえられ、達せられないもどかしさを抱えながら、甘く緩やか

な口淫が続く。しばらく周辺を彷徨っていた手が双丘を割って下ると、秘められた蕾へ辿

り着いた。ビクン‥とソロが腰を震わせる。

「あんっ‥。クリ‥フト、も‥やだ‥よぉ‥‥‥」

「…止めて欲しい、という事ですか?」

熱で瞳を潤ませたソロが降参とばかりに話しかけると、冷静な声が返された。

「‥意地‥悪…。」

「唐突な別離宣言ほどじゃありませんよ。」

にっこりとクリフトが微笑んだ。

「‥クリフト、もしかして怒ってる…?」

緩々とした愛撫を甘受しながら、吐息交じりにソロが怖々訊ねた。

「怒る‥? 心外ですね。こんなに優しくしてるのに…。」

「あんっ。はあ…」

ぺろっと先端を舐め上げられ、ソロが躯を震わせた。

「う‥嘘だぁ‥‥。焦らして愉しんで…る、‥はぁ‥っ‥‥」

「ふふ‥それは当たってますね。」

クリフトはポケットから取り出したハンカチを指の輪の所できゅっと結わえ始めた。

「ちょ‥っ、クリフト、何やって‥‥!?」

「駄目ですよ、まだ。」

屹立を縛ってしまったモノを取り外そうと、慌てて手を伸ばしたソロだったが、クリフト

にしっかり止められてしまった。両腕をシーツへ縫い止め、躰を伸ばしたクリフトが、

ソロに覆いかぶさる。

「こういう涙は誘られるものですね。」

ソロの目尻に浮かんだ涙をキスで拭うと、そっと耳元へ口を寄せ囁いた。色めいた声音に、

ゾクン‥と躰を悸わせたソロの耳朶を、クリフトが優しく食んでくる。

「あ…ん‥」

「‥そろそろ、考え改める気になりました?」

「考え‥って?」

情に潤み目元を染めたソロが、ほわんと返した。

「独りになりたい‥そう言ってたでしょう?」

クリフトはそう語りかけると、両腕の戒めを解き、そっと彼の頬を包み込んだ。

「…あ。…だって‥‥オレ…オレは‥」

「…独りになって、心を閉ざしてしまわねば、デスピサロとは戦えない‥ですか?」

「‥‥‥!」

ソロは一瞬泣きそうな顔を浮かべたが、どうにか堪えると、じっとクリフトを見つめた。

「…どうして、それが‥」

「‥彼の事、まだ‥好きなんでしょう? だから、戦えない‥そう思った。違いますか?」

「ふ‥ぅ。‥っ‥く。ふ‥‥」

クリフトの言葉に、ソロがぽろぽろ涙を零し始める。

「あなたが‥彼をふっ切れないでいる事は、別に構わないんですよ?

 けれど‥。あなたを失うと解っていて、この手を離す事は出来ません。

 忘れないで下さい。私は…あなたが‥好きなんです。」

「クリフト…どう‥して。‥ピサロの事‥オレ‥‥なのに‥」

「言ったでしょう? 全部引っくるめて受け止めると。相手がデスピサロというのは意外

 でしたが。それでも…この気持ちは変わりようがありません。」

「ふぇ‥っ。クリフトのバカぁ〜。」

大粒の涙をぽたぽた落としながら、ソロがクリフトに抱き着いた。

「オレなんか見限ってくれればいいのにっ。一番いらないのはオレなんだ。

 だから‥だから‥‥」

「‥あなたがいらないのなら、私に下さい。」

宥める仕草で抱きしめ返したクリフトが、そうソロに囁きかける。

「彼を忘れられないなら、それでも構いません。

 せめて側に‥居させて下さい。」

「クリフト‥。ふ‥ぇ…ん‥‥ふ‥っく。」

半身起こしたクリフトの肩口に頭を埋め、ソロはしばらく泣き続けていた。



「…クリフトは‥」

やがて。呼吸が整ってくると、ソロがぽつんと話し出した。

「クリフトは…突然居なくなったりしない‥? オレを‥置いて‥‥‥」

廃墟となったソロの育った村。交わる事のない想いの先‥更に遠くなった恋。

いつもたった独り残されてしまう‥そんな想いに囚われながら、ひっそり彼が訊ねた。

「ええ、もちろん。約束します。決して独りにはしませんから‥。」

「クリフト‥。」

ソロは顔を上げると、じっと彼をみつめた。

「‥約束…だからね‥?」

念を押すよう言葉を紡ぐ。誓いを込めるよう、ソロは唇を重ねさせた。

「ええ‥きっと…」





たった一夜の夢で、危うく見失うところだった――



静かに眠る柔らかなソロの翠髪を撫ぜながら、クリフトは色を失くした彼の姿を憶い出した。

あのまま行かせてしまってたら…

そう考えた途端、ゾクっと冷たいものが込み上げてくる。



――勇者の役目



ソロは何度も、まるで自分に言い聞かせるよう口にする。

確かに‥彼が背負った役割は大きい。

けれど…



「あなたがあなたで居るコト…それがなにより大切でしょう‥?」

眠りを妨げないようひっそりと、クリフトはソロへ語りかけた。

身動いだソロが彼の背に腕を回す。そのまま引き寄せられるよう身体を横たえたクリフト

が、彼の横に並んでゆっくり瞳を閉ざした。





「‥おはようございます、ソロ。」

ふわり‥と彼の柔らかな髪を撫ぜ、クリフトが彼に声をかけた。

その声は、まだ昨晩の余韻を残しているのか、どこか甘く響いた。ゆっくりと髪を梳る動

作すら、優しく染みる。                        
梳る→くしけずる

ソロはふるふると身体を悸わせると涙を落とした。

「ソロ…どうかしたんですか?」

頭だけ起こしながら、クリフトが彼を案じるよう訊ねた。

「…ううん。なんでもない。ただ‥さ‥‥‥」





――オレはこんな風に、あいつと朝を迎えてみたかったんだ。



デスパレスで囚われてた時。

目を覚ました朝に感じた寂しさの理由をやっと実感し、ソロは涙をこぼした。



「…ね、クリフト。あの‥さ…」

ソロは身体を起こすと、同じように半身起こしたクリフトの肩に寄りかかった。

「あの‥ね。あいつのコト…ちゃんと過去にするから。だから‥

 あの…いろいろ話しても、いい‥?」

途惑いながら、ソロが遠慮がちに問いかける。

「ソロ‥」

「‥そういうの、嫌?」

ソロは顔を上げると、上目遣いに彼の様子を窺った。

「構いませんよ。寧ろ‥知りたいと思ってましたし。」

心配そうな彼に笑んで返したクリフトが、彼を抱き寄せた。

「ホント‥?」

「ええ‥。あなたが辛くないのなら、話して下さい。」

ソロはコクコク頷くと、正面からぎゅっと抱き着き、キスを強求った。

望むままに口接けられて。ソロがうっとり返す。



――ピサロ。



本当に‥‥さようなら…



労るような口接けは、どこまでも優しく温かで。

彼の温もりに愛おしさを覚えながら、ソロは触れ合う心地よさに身を委ねていった‥






2005/12/3



あとがき

夏中ずっと抱えていたお話、ようやくUP出来ました(^^
最初に出来あがった文と比べると、大分変更が出てますが・・まあ、こんなモンかな・・と。
神殿跡での戦闘(?)など、最初の文が一番ソロくん過激だったかも★
結局こうして出来あがったら、随分おとなしめに上がってしまいました。
う〜〜ん、残念。

変更…といえば。
実は今回ちょっとキレたクリフト…あれがソロとクリフトの初えっちになる予定でした。
それが前回でなんとなくそんな雰囲気になってしまって…
予定を早めてしまったんですね。(結果的にはそれでよかったと思うけど)
この2人の関係。
実は当初の予定よりず〜っと早く出来あがってます(++;
最初の予定では、6章手前で、そうなるかも?・・・くらいな気持ちだったんですが。
フタを開けてみたら…

ソロが無意識部分でクリフト煽って落としてしまい。(苦笑)
現在クリフトが結構マジで、ソロに向かってる…と(^^;

さてソロは…?

とゆーのは、6章着いてからはっきりするのかな?
未だにピーサマふっきれてないのは確かですが。
クリフトへの気持ちがどう動くのか。(現時点での「好き」もちゃんと本心ですけどね)

私もドキドキ見守ってみたいと思います(^^

今回の話。
実は表から裏へ分けてしまうつもりだったんですが・・
本当に濃い部分を含んだ後半、「約束だからね」のキス以降を、ポイントだけここにも
写してシメてみました。

実は結構長かった1日。
裏にUPしましたので、大丈夫な方よかったら跳んでみて下さいませ♪

それでは。長々とお付き合い下さりありがとうございました!