「‥ん。…おはよーピサロ。」

翌朝。心地よい眠りからゆっくり浮上させたソロが、ほんわりと、隣で横たわっている

彼へ声をかけた。

「‥ああ。おはよう‥ソロ。」

スッと眇められた瞳の優しさに、ソロの心臓がとくんと跳ねた。

寄せられる唇をそのまま受け止めて、しっとりそれが重なる。

「…あ‥」

ソロをしっかり抱きしめるよう、ピサロの手が彼の背に回されると、ビクンと躰が跳ね

上がった。

「…どうした?」

一瞬何事‥と眉を寄せ、それからもしや‥とソロを窺う。

案の定、その表情は仄かな色が滲んでいた。

「…昨夜、足りなかったのか?」

「ばっ‥違う‥もん…。コレは‥違うんだ‥もん‥‥‥」

うるる‥と瞳を潤ませ、頬を染める。

背に止まっていた腕が、試すよう摩ってくると、更に甘い吐息が上がった。

「ふっ‥あ‥‥。あ‥ん‥‥ピ‥サロぉ‥‥‥」

恨めしげに彼を睨むソロだが、情を孕んだ瞳では、むしろ誘っているようにしか映らない。

魔王はひっそり微笑いを落としつつ、敏感に反応を示す場所を弄った。

「ひゃ‥ん‥‥。も…駄目ぇ‥‥‥」

艶やかに啼きながら、ソロがすっかり情に染まった躰を反った。

ふ‥と視界の端に身支度整えたクリフトの姿を捉える。

「‥クリフトっ。見てないで…なんとかして‥?」

吐息交じりに言い募るソロ。

「そこまで煽られてしまっては、中断する方がツライでしょう?」

縋る瞳にクリフトが微笑んで答えた。

「…まあ。今日は夜のミーティングまで時間ある事ですし。

 ゆっくり過ごされても問題ないですよ。」

「け‥ど…あっ‥‥。ん…ピ‥サロっ‥‥」

徐に寝間着を剥いでゆく彼に、ソロが抗議する。

「ああ…食事でしたら、ちゃんと運んで上げますから。心配入りませんよ。」

「違‥そう言う、んじゃ‥なくて…あっ。クリフト‥行っちゃうの…?」

「食事を済ませたら戻って来ますよ。2人分持って帰りますから。

 トルネコさんにも適当にフォロー入れて置きますので。その方が安心でしょう?」

「それは…そう‥だけどっ。あっ‥‥」

「後でね‥ソロ。」

すっかり剥かれてしまった彼の頬へキスを落とし、クリフトは部屋を出てしまった。

「…クリフト。」

ピサロと2人っきり残された部屋で。ソロが静かに閉ざされた扉を見守る。

「‥ソロ。奴を追いたいなら、中断しても良いぞ?」

スッと顎から頬へと伝った指先が、優しく髪を梳ってゆく。

「馬鹿‥。今止めたら、もう触れさせないんだからね…」

どうせ‥中断する気なんかないくせに…そう微苦笑んで、ソロは口接けを強求った。



明るい日差しがカーテン越しに射し込む室内。

和やかな朝。深く睦み合う音が光に融けた。

「‥あ‥ああっ…。ピサロっ…ピサロ‥‥‥!」

深い場所で受け止めて。ソロが艶めいた嬌声を上げる。

すっかり朱に染まった肌がしっとり汗ばみ、潤んだ瞳から涙が溢れた。

「ふ‥ぁ。ああ‥‥‥ピ‥サロ…」

きゅっとその背を掻き抱くと、腰を支えていた手がゆっくりと滑った。

胡座を掻いた彼の膝の上で。深く交わった体勢でいるソロが、支えを失くすと縋るよう

回した腕を絡ませる。

「ひゃ‥ん。…も、‥ヘンに‥なっちゃう…よ‥‥‥」

緩く突き上げながら、胸の飾りを親指の腹が辿ったかと思うと、敏感な背へ這ってゆく。

ビクビクと反応を見せながら、ソロが甘く喘いだ。

「本当に‥ココが弱くなるようだな。昨夜はこれ程反応見せずいたが…」

クスリ…と笑んで、魔王が緩々そこを辿る。

「も…駄目ぇ‥。馬鹿ぁ‥‥」

ビクンと躰を跳ねさせて。ソロが啼いた。焦躁ったげに腰が揺らめく。

「ね…もっと、欲しいの‥‥」

動いて…とソロが強請む。ピサロは微笑を深めると、悪戯してた手を腰へ戻し、穿った。

「ふ…あ‥‥っ。あ‥あ‥‥‥」

白い喉を露にし、ぽろぽろと艶やかな嬌声が、打ち付けるリズムに合わせこぼれてゆく。

「…っく。‥‥‥っ…」

「ふ…ああっ‥‥‥」

やがて。大きく穿たれたソロは、迸りを感じながら自らも昇りつめた。

「はあ…はあ…。」

くったりと身を預けて、ソロは解放の余韻に浸る。けれど。身内に沈む彼の存在が、

沸々と熱を煽ってきて、吐息はすぐに熱が交じり始めた。

「ピ‥サロ。」

かったるそうな躰をゆっくり動かして、ソロがピサロを見つめた。

すうっと彼の首に腕を絡め顔を寄せると、口接けが降りてきた。

「ふう…ん‥‥んっ…」

すぐに深まった接吻は、どちらとも判らぬ蜜で溢れ、絡まってくる。

「あ…ん‥っ。ふ‥‥‥ん…ん‥‥」

口の端から伝う滴が首筋を通り、鎖骨を辿った。それを指の腹で受けたピサロが胸へと

塗り込めてゆく。

「はあ‥っ…ん‥‥」

その感触に身動ぐと唇が解放された。ピサロはその唇を首から鎖骨、胸へと降ろして行き、

辿り着いた果実をねっとりと舌で舐った。

「あ‥ん‥‥‥」

ゾクンと躰を悸わせ、ソロが甘い吐息を落とす。

「ね…。もっと…欲しい‥‥‥」

すっかり熱を取り戻した中心から樹液をとろとろ滴らせ、ソロが強求った。

「ああ…存分にな‥」

フッと口元に微笑を称え、ピサロが彼を横たえさせた。

繋がりはそのままで。体勢を変えられて。ソロが艶めいた喘ぎを落とす。

ぐっと腿の裏を掴まれ、ピサロが抽挿を開始した。



朝から濃密な時間を過ごして。

熱病が小康状態となったのは、昼近く。

ソロがぽやんと微睡んでいた瞳をふと横へ向けると、サイドテーブルに薄い布の掛かった

盆が置かれていた。

「‥あれ。ご飯‥だよね?」

いつの間に‥と首を起こしたソロが呟く。

「先刻神官が届けた時、貴様も返事をしてたではないか。」

呆れ顔でピサロが話すと、「そーだっけ?」と首を傾げた。

どうやら無意識に返事をしていたらしい。

「オレ‥お腹減った。」

上体を起こし、そう告げると、ソロはよれよれと浴室へ向かった。

ピサロも彼に続いて共に向かう。

「ここ小さい宿だけど。部屋にシャワーも浴槽も揃ってるんだね…」

感心したよう言いながら。ソロはコックを捻った。

倦怠そうな躯をのっそり動かし、全身の汗を流すようシャワーを浴びて。

ソロは「お先に」と浴室を出た。

水音を聴きながら着替えを済ませて、脱衣所を後にする。

閉ざされたカーテンを開け、窓を開放すると、和らいだ風がふわり舞い込んだ。

ざわざわと木々の葉擦れの音が届く。

ソロはほう‥と吐息をつくと、きちんと整えられてるベッドへ向かい腰を降ろした。

早速、サイドテーブルに乗せられた盆の中身を確認する。

サンドウィッチにレモネードの入ったデカンタ。

ソロはふっ‥と浴室へ目をやったが、まだ終わらぬ水音に、「ま。いいか」とこぼし、

美味しそうなビーフサンドを手に取った。

「美味しいv」

すっかりお腹を空かせていたソロは、ぱくぱくとサンドウィッチをほおばってゆく。

ピサロが部屋へ戻って来る頃には、きっちり半分平らげた後だった。

「‥あ、ピサロ。遅いから先食べちゃったよ。」

「早いな…。」

「後残ってるの、ピサロの分だから。」

自分の分は食したと、ソロが言外に伝える。

ピサロは部屋の角の机から、サイドテーブルへ椅子を移し腰掛けた。

ソロがグラスへレモネードを注いでやって、自分の分も継ぎ足す。

「‥あのねえ。どれも美味しかったけど。これが一番お勧めだった。」

サイドテーブルへ肘を乗せ、ソロが自分が気に入ったサンドを指した。

「…食うか?」

早速それにピサロが手を伸ばしたかと思うと、ソロへついっと差し出された。

「‥だって。ピサロの分、足りなくなるよ?」

「私は後でも良い。これで目一杯体力補充しておけ。」

「‥うん、じゃあ。頂きます…」

逡巡した後、ソロはそれを受け取った。

結局そのほとんどを腹に納めて。ソロは満足顔でそのままベッドに寝転んだ。

ふわあ…と欠伸が1つ落ちる。

やはり相当消耗してたのか。ソロはそのままくーと寝入ってしまった。

穏やかな寝息を眺めるピサロが口元に微笑を浮かべる。

閉ざされた空間で、長い時間2人だけで居るのに。ソロが緊張を走らせる事はなかった。

再会した時の拒絶が融け始めている事に、知らず安堵の笑みがこぼれる魔王だった。





2006/4/21
   
                

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